小説1
□恋
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そして傷も完治に近くなった頃、綱吉はもう一度電話をしたいと頼んでみた。
あれから1週間もたっている。
とりあえず無事である事を知らせたかった。
「電話・・・かぁ」
ちなみに綱吉が相談してみたのはスクアーロ。
彼は少し考え、それから言いにくそうに言った。
「俺からはなんとも言えねぇが・・・一応ボスに聞いてみるぜぇ」
「はい、ありがとうございます、スクアーロさん」
部屋を出た後、スクアーロは廊下で考え込む。
電話・・・大丈夫かぁ?これ言ったら俺がボスに殴られそうだぜぇ・・・。
にしても、そうなるといつまでも綱吉をここに置いとけねぇぞぉ?どうすんだぁボス・・・。
綱吉の傷もそろそろ完治する。
そうなると彼女をここにとどめておく理由がなくなる。
ザンザスだけでなく、スクアーロやその他ヴァリアー達も、結構綱吉の事が気に入ってしまったのだ。
普段は触れる事さえ出来ない暖かさ。
言われる事などないと思っていた言葉。
「スクアーロさんって優しいんですね」と言われた時の彼の顔といったら、とても部下に見せられるものではなかった。
ベルやマーモンも、綱吉と遊んでいる時は子供らしさが少し出てくるようだった。
そして次の日。
いきなりザンザスが来た。
どうせスクアーロだろうと思っていた綱吉は、そりゃあ驚いた。
「電話だったな」
そう言うとついて来るように言う。
初めて部屋の外に出る綱吉は、嬉しいけれども戸惑ってもいた。
廊下に出ると、特に変わったものもなく普通だった。
とんでもなく広く長かったが。
そしてすぐ近くの部屋に入る。
聞けばザンザスさんの部屋らしかった。
そこで電話を貸してもらえた。
国外でも通じるからと言われた。
とりあえずお言葉に甘えて使わせてもらう。
一旦どこかに繋がって、それからすぐに家に繋がった。
『はい、沢田です』
久しぶりに聞いた母の声。
綱吉は泣きそうになるのを堪えながら受話器を強く握り締めた。
「母さん・・・?」
すると、受話器の向こうから息を飲む音がした。
『もしかして・・・つ・・・ツッ君・・・?』
「うん、そう」
『っホントにツッ君?!ど・・・どうしたの?!今何処にいるの?!ちゃんと無事?!母さん迎えに行くから、場所は何処?!』
一気に言われた。
でもとりあえず、まずこの一言を言いたい。
「母さん、ごめんなさい、心配かけて」
ちゃんと言う事聞かずに勝手に子供だけで旅行になんて行って、ごめんなさい。
すると母さんは「何言ってるの!!」と怒鳴る。
『今はそんな事いいのよ!!無事なのね?大丈夫?怪我は?一体何があったの?お友達からはぐれたって連絡を受けてから母さん心配で心配で・・・』
普段おっとりした母さんがここまで慌てるのも珍しい。
そうさせたのは他でもない自分なのだけれど。
「大丈夫、詳しい事は後で話すけど、親切な人が助けてくれたんだ。ちゃんと1人で帰ってこれるよ。友達にも、大丈夫だって伝えておいて」
『そう・・・とにかく良かったわ・・・。何かあったらすぐに連絡するのよ?母さん飛んでくから』
「うん、ありがとう」
そして電話を切った。
最後の方はもう声が震えていたから、きっと泣いていたのだろう。
ここまでそうさせた自分を叱りたい気分だった。