小説1

□恋
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それから、食事やなんやでいろんな人が来た。
 
 
まずはスクアーロさん。
銀の長い髪に独特の喋り方、鋭い目つき、でも優しい。
主に食事を運んでくれた。
 
そして次にルッスーリアさんが来た。
最初はビックリしたけど、すごく話しやすい・・・どちらかというと女性に近いものを感じる人。
着替えなどを持ってきてくれた。
しかも結構可愛いやつ。
 
そんな合間にたまに遊びに来てくれるのはベルとマーモン。
よく2人セットで来ては、トランプやオセロなどを持ち込んで一緒に遊んでくれた。
ベルは同い年か少し年上くらいだろうか。
マーモンに至っては赤ん坊だった。
 
一度だけ、スクアーロが仕事で来れない時にレヴィさんが来てくれた。
ピアスをいろんな所に開けていてずいぶん痛そうだった。
申し訳ないが、1回会っただけなのでそんな印象しかない。
 
 
みんなザンザスさんの部下らしい。
 
そしてしばらくたって気づいたのだが、みんな日本語を喋っていた。とても流暢に。
聞くと、大体の国の言葉は話せるらしい。
そんな人が本当にいるんだなぁと思った。
 
 
 
けれど、部屋からは出してもらえなかった。
トイレなどはついているから問題はないのだが。
 
危ないから、らしい。
 
 
 
 
そして、あれ以来ザンザスさんとは会っていない。
 
こんなによくしてもらって、お礼も言いたいのに。
 
 
 
 
 
「ねぇルッスーリアさん」
 
「なぁに?綱ちゃん」
 
もう彼の前で着替えをする事に何の疑問も持たなくなっていた。
それどころか、着替えた後ルッスーリアさんに褒めてもらったりするのが楽しみになっていた。
 
 
「ザンザスさん、何で私を助けてくれたのかなぁ。本人はなんとなくとか言ってたけど」
 
「綱ちゃんに人目惚れでもしたんじゃないかしらぁ?」
 
「まっさかぁ」
 
 
 
 
実はそのまさかだった。
 
部屋の外で聞き耳を立てながら、ザンザスは冷や汗を流していた。
 
 
 
あの時、仕事を終えて帰ろうと裏路地を通った時、これ以上ないくらい怯えながら隠れている少女を見つけた。
 
顔や髪、服も泥だらけ、手足は擦り傷だらけの酷い状態だった。
 
こんなのはよくある事だ。
 
どうせ売られそうになり逃げてきたとかそんなところだろう。
そう思って通り過ぎようとしたが、何故かその少女から目が離せなかった。
 
特に変わったところもない。
 
東洋系・・・日本人だろうか、そんな顔立ちに細すぎる身体。
本来は白いであろうその肌も、今は泥と傷で隠れてしまっている。
 
 
自分でもどうしてそんな行動に出たのかわからない。
 
 
気づいたら手を差し出していた。
 
 
 
手を取った直後に気を失った少女の身体は、ビックリする程軽かった。
 
 
 
 
そしてそれが人目惚れだったという事に気づくまで、軽く3日はかかった。
 
 
だがそれがわかったところでどう接していいかわからず、こうして毎日様子は見に来ているものの会えずじまいなのだ。
 
 
 
 
愛人はいた。
 
この歳で童貞なんて言うつもりもない。
 
 
 
ただ、人を愛した事がなかった。
 
 
誰かに嫌われたくないと思った事がなかった。
 
 
だからわからない。
 
 
どう接すればいいのか。
 
 
 
どうしたら嫌われずにすむのか。
 
 
 
 
 
 
 
 
綱吉はみんなと仲良くなったが、特にルッスーリアには何でも相談出来た。
彼女の中で彼は“いいお姉さん”というポジションになっていた。
 
 
「ルッスーリアさん、ザンザスさんは忙しいの?」
 
「あら、どうして?」
 
「だって・・・あれ以来会ってないし・・・」
 
少しむくれる綱吉。
それにルッスーリアは「あら?」と手を口に持っていく。
 
 
「綱ちゃん、ボスに会いたいのかしら?」
 
「えっ?そ、そんなんじゃないけど・・・」
 
 
でも気になるのだ。
 
助けてくれたあの時、真っ黒なはずなのに、光に見えた。
 
あの手が救いの手に見えた。
 
 
そして実際、そうだった。
 
自分を優しいところまで連れてきてくれた。
 
 
あの手は確かに、救いの手だった。
 
 
 
 
「綱ちゃん、最初にボスを見た時、怖くなかった?」
 
「へ?どうして?」
 
警戒はしていたが、彼本人を怖いとは思わなかった。
 
 
「だって、あの強面でしょ?一般人ならあの顔を見ただけで逃げ出すものよ?」
 
するとルッスーリアは次の瞬間、予想外の答えを聞いた。
 
 
「怖くなかったですよ。それにすごく優しいですし」
 
 
「・・・・・・優しい?!あのボスが?!」
 
「え・・・えぇ。まぁ確かにちょっと怖そうな顔はしてますけど、昔から母さんに“人を見かけだけで判断しちゃダメ”って言われてたんです」
 
やっぱりその通りでした、と嬉しそうに笑う綱吉に、ルッスーリアはう〜んと考え込む。
 
 
それから適当に話をした後、我がボスの元へ向かった。
 
 
 
 
 
 
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