小説1

□恋
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特に乱暴されるでもなく、むしろ丁寧に扱われた。
 
高級そうな車に乗せられてついたのはこれまたものすごく広いお屋敷。いや、お城?
そこですごく綺麗な服をもらって、いかにも高そうな食事ももらった。
 
 
 
不思議でたまらなかった。
 
 
すぐに殺される事も考えていたのに。
 
 
 
この人は何が目的なんだろう。
 
 
 
 
しかし、それも夜になってわかった。
 
あてがわれた部屋でくつろいでいると、例のおじさんが入ってきた。
 
 
そして、有無を言わさずベッドに押し倒された。
 
 
服を脱がされかけ、やっと恐怖が頭についてきた。
 
 
 
 
 
それからの事はあまりよく覚えていない。
 
ただ、ひたすらに暴れて逃げ出した。
 
襲ってきたおじさんも油断していたらしく、部屋の鍵も閉まっていなかった。
 
 
 
めちゃくちゃに走って、屋敷を出て、またひたすらに走った。
 
 
もともと体力のない綱吉がずっと走っている事なんて無理な話で、物陰に隠れたりしながら逃げていた。
 
 
 
 
 
ここが何処だかわからないが、追っ手の来ないところまで逃げなくてはと必死だった。
 
 
高そうな服もボロボロだった。
 
きっと顔も髪も酷い事になっているだろう。
 
手足も泥だらけの擦り傷だらけだった。
 
 
 
 
 
そして裏路地でしゃがみ込んでいたら追っ手の声が聞こえた。
 
 
 
 
もうダメだと思ったその時。
 
 
 
 
 
黒い影が現れた。
 
 
 
そして言った。
 
 
 
 
 
 
「助かりたいか」
 
 
 
 
 
 
 
“助かりたいか”?
 
 
 
当たり前じゃないか。
 
 
 
 
 
辺りが暗い上にその人物も全体的に黒かったので、よく見えなかった。
 
だが、追っ手じゃない事はわかった。
 
 
 
 
 
 
助かりたい
 
 
 
 
 
助けてほしい
 
 
 
 
 
 
 
 
目の前に手が差し伸べられた。
 
 
 
 
 
この手をとっていいのだろうか
 
 
 
 
それでも、他にすがれるものはない
 
 
 
 
 
 
 
 
そして私は
 
 
 
 
 
 
最後の望みをかけて
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
その手をとった
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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