小説1

□恋
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綱吉は無事日本に着き、家に帰って来た。
 
 
ドアを開けた瞬間、母親に思いきり抱きしめられた。
 
そして、そこには一緒にイタリアに行った京子、花、ハルもいた。
3人とも、奈々の後に飛びついて来た。
そしてわんわん泣きながら無事で良かっただのはぐれてごめんだのと言葉にならないような言葉で叫ぶ。
 
 
綱吉はそれにおどおどしながら、それでもやっと帰って来たという事を実感し、涙が一滴流れた。
 
 
 
 
リビングに行き落ち着き、今までの出来事を話す。
 
こうして考えると、向こうで起こった事がまるで夢のようだった。
 
しかし確かに、恐怖はこの胸の奥底に存在する。
 
 
あの時の事はきっと一生忘れないだろう。
 
 
凪のことも・・・。
 
 
 
 
 
聞き終えた4人は、まさか綱吉がそんな目に会っているとは予想もしていなかったらしく、驚愕していた。
 
 
「ツナちゃん、すごく大変だったんだね・・・」
 
「ていうか波乱万丈・・・」
 
「はひーっ、ツナさんが無事で本当に良かったですっ」
 
「きっと助けてくれた人がすごくいい人だったのね〜」
 
 
 
助けてくれた人・・・ザンザスについては、あまり詳しく話していない。
 
もちろん、空港での事も・・・・・・。
 
 
 
あれから考える時間は充分にあった。
 
だが、全然考えがまとまらなかった。
 
いきなりあんな風に強く抱きしめられて、あんな台詞を言われて。
 
誰だって戸惑う。
 
 
 
しかも綱吉は学校ではダメツナと呼ばれる程ダメダメで、もちろん告白などされた事もない。
 
しかし実を言うと、京子や花やハル達が周りで綱吉を守っているため、誰も告白する隙がないだけなのだが。
モテないと思っているのは綱吉自身だけで、結構男女問わず人気があるのだ。
ダメツナと呼んでいるのは、愛情の裏返しというか、好きな子程苛めたくなるという訳である。
 
ルッスーリアの言った事はあながち間違いでもなかったのだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
それから2週間がたっていた。
 
まだ高校は始まっていない。
 
大体が友達と遊ぶ毎日だが、それでも1人になると考えるのはザンザスの事だった。
 
 
今も夕食を食べた後でいつもならゲームをするか漫画を読んでいるというのに、ベッドに寝転がり何をするでもない、ぼーっとしていた。
 
 
渡された携帯は大事にしまってある。
 
 
いつものようにそれを机の引き出しから取り出し、ぎゅっと握り締める。
 
 
そうして思い出すのは、抱きしめられた感触と、告白の言葉だった。
 
 
 
 
「私、ダメツナだよ?勉強運動ダメダメで・・・それは知らないとしても、顔だって全然良くないし、可愛くも綺麗でもないし」
 
 
どうして自分だったのだろうか。
 
スタイルだって良くない。
 
自慢じゃないが、ただ細いだけで胸もそんなにない。
 
ザンザスさんと会話をしたのだってほんの少し。
 
イタリアなんて、いい女なんて山ほどいるだろうに。
あんなカッコイイ人ならどんな女性だって断らないだろうに。
 
 
と、そこまで考えて綱吉はハッとする。
 
今、自分は何を考えていた?
 
ザンザスをカッコイイ人って・・・。
 
いや、確かにカッコイイけど。
 
少し顔が怖いが、中身は全然怖くなかった。
 
 
むしろすごく優しかった。
 
 
でも、それが好きって事かどうか、わからない。
 
 
半端な気持ちで会ってはいけない気がした。
 
 
 
 
 
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