小説1
□お隣さん
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「ザンザスさん・・・?」
呼ばれてようやく、ザンザスは我に返った。
「悪ぃ、考え事しちまってた」
すると綱吉が驚いた顔をした。
「馬鹿に・・・しないんですね・・・」
「あ?何でだ?」
「いえ、大体がみんな馬鹿にするか笑うんですよ。面談の時なんて先生は“やっぱり運がないんだな〜”って苦笑いしてたし・・・」
それは・・・教師としてどうなのだろう。
それに・・・・・・
「俺も、人の事笑えた義理じゃねーしな。でも、おまえはスゲェと思う。きっと詐欺に会っても、人を信じる事をやめねーんだろ?」
「はい。世の中、悪い人も沢山いるけど、いい人だって沢山いるんです。俺は、疑うよりまずは信じてみよう!!・・・って思ってます。・・・・・・まぁ、実はコレ母親からのうけうりなんですけどね」
そう言って照れ臭そうにはにかむ綱吉。
「おまえの親が建てた家や稼いだ金も、おまえの役に立ったんなら本望じゃねーのか」
すると綱吉は一瞬きょとんとし、次の瞬間、ボロボロと泣き出した。
これに困ったのはザンザス。
泣いている者を目の前にどうしたらいいのかわからなかった。
綱吉は泣きじゃくりながらぽつぽつと話し出す。
「っ・・・お、俺、そんな、こと・・・ば、かけてもらっ・・・・・・なくて・・・・・・っ」
その大きな瞳からとめどなく流れ出る涙。
きっと、今まで我慢してきたのだろう。
たった1人で耐えていたのだろう。
その小さな体に、有り得ない程の大きなものをしょい込んで。
思わず立ち上がり、気付いた時には綱吉の元にしゃがみ込んで彼を抱きしめていた。
それにすがり、綱吉は声をあげて泣き始めた。
こんな古いアパート、きっと壁も薄いだろうから近所迷惑になるかもしれない。
それでも、思いきり泣かせてあげたかった。
明日にはまた元気で明るい彼に戻っているように。
だから、今だけは、甘えてほしい。
自分には、抱きしめて頭を撫でてやる事くらいしか出来ないから・・・・・・・・・。
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何だか、常識人なザンザスです・・・。
2007.11.30