小説1

□お隣さん
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そして数週間後、ザンザスと綱吉はごく自然にお互いの部屋を行き来するようになっていた。
 
だがそれは休日の土日の、しかも夕方以降に限られた。
 
綱吉が高校とバイトで忙しいのだと知ったザンザス。
そんな彼の貴重な睡眠時間を奪う程子供ではなかった。
 
ザンザスも仕事が出来たので、それなりに忙しかった。
 
 
 
 
 
 
 
そしてある土曜日の夜の事。
 
 
土日は綱吉の部屋で食事をするのが日課になっていた。
もちろん、彼の手作り料理だ。
彼は、煮物だけでなく和食なら何でも作れ、そのどれもがとても美味しかった。
 
いつの間にか、彼の手料理を食べながら一緒にいる事が1番の楽しみになっていた。
 
何故だろう。
 
こんなに穏やかになれる時がくるなど、想像もしていなかった。
このままずっとこうしていたいとさえ思った。

 
 
 
 
 
「親がいない?」
 
 
そんな時、彼の身の上話を聞いた。
 
 
「はい、だからバイト忙しくて・・・・・・でもせめて高校は卒業しないと就職も難しいだろうし・・・」
 
でも母さんはいないけど、父さんならどこかにいると思いますよたぶん、と続けた。
 
「どういう事だ?」
 
人に興味など示さないザンザスが、初めてこんな質問をした。
 
「そのままです。死亡報告とか受けてないし、死体も見つかってないから、きっとどこかでフラフラしてんじゃないかな〜って」
 
綱吉いわく、母親が死んだのは小学校卒業後すぐ。
そして中学卒業までは父親もいたが、その後すぐ海外に出張だと言って出ていったきり、行方不明だそうだ。
 
本人は「おかげで家事全般は出来るようになりました〜」と、なんとも暢気な事を言って笑っていたが。
 
 
 
それに比べ、ザンザスは己の行動を少しだけ恥じていた。
 
今まで散々親に世話になっておきながら、何自分勝手でわがままな理由で家出をしているのだ、と。
それにしても・・・・・・
 
 
「まさかずっとここに住んでんのか?」
 
いくらなんでもこの部屋に3人はキツイだろう。
 
「いえ、ちゃんと1軒家だったんですけど、売り払ってきちゃいました」
 
 
「・・・・・・・・・は?!」
 
 
あまりに突飛な事をサラっと言われたものだから、思わず聞き返してしまった。
 
 
「中学卒業後、父さんが行方不明になったって言いましたよね。そのすぐ後、詐欺に遭っちゃったんです。それで沢山借金しちゃって、しょうがないから家を売り払って、あとは親が貯めてたお金でなんとか全額返せました。家の方はローンも終わってたんで幸いでした。それでここに来たんです」
 
 
「・・・・・・スゲェな・・・」
 
いろいろと。
 
 
「でも、せっかく親が苦労して建てた家や働いて稼いだお金を、俺の不注意が原因の借金の返済なんかに使っちゃって・・・・・・すごく親不孝者ですよ俺・・・」
 
 
その後、「ザンザスさんは何でここに住む事を決めたんですか?」と聞かれたが、答えられなかった。
 
 
1番の親不孝者は誰でもない自分だった。
 
何が周りの目が不愉快だ。
 
そんなの俺には関係ない。
 
ボンゴレを継ぐのが嫌なら別の道を見つければいい。
 
俺の人生は俺のものであって、誰のものでもない。
 
一人だってこんなに一生懸命立派に生きている奴だっている。
 
・・・・・・一体、家出に何の意味があったのだろう。
 
自立と家出は違う。
 
金銭的には自立出来たと言ってもいいのかもしれない。
 
だが、精神的には何も成長しちゃいなかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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ごめんなさい奈々ママン・・・。
いや、大好きですよ?
ただ、いい人程儚いっていうか・・・(家光はなんだ)
2007.11.30
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