小説1

□お隣さん
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「オメデトーっ」
 
 
クラッカーが談話室に鳴り響く。
掲げてある横に長い旗には“新しい仲間ザンザスを歓迎する会”と書かれていた。
 
 
談話室に呼ばれて、入っていきなりその光景を目にしたザンザスは、驚くほかなかった。
 
言われるがまま主席に座らされ、みんなもそれぞれ席に着く。
 
一人ずつ自己紹介をしていき、最後にザンザスが軽く挨拶をした。
綱吉に本名を言ってしまったため、偽名は使えなかった。
 
それからは、ただ飲んで食べてとがやがやして自由になる。
やはりほとんどがザンザスの元へやってきた。
そして質問攻めに適当に答える。
 
 
 
今、こうして集まっている人々は、自分が金持ちだと知らない。
大型会社の社長の跡取り候補だと知らない。
 
ただ“ザンザス”に興味を持って集まっている。
 
それが嬉しかった。
 
 
下心のない態度。
 
裏のない言葉。
 
純粋な目。
 
 
どれも感じた事のないものだった。
 
 
 
 
 
夕方から始めた歓迎会は幸いみんな参加でき、夜まで続いた。
それからポツリポツリと帰り始める。
 
 
「日本語ダイジョーブですので、何かあったら言ってくだサイ」と、受験生のイーピンがまず部屋に戻っていく。
受験勉強で忙しい中わざわざ来てくれた事を後で知った。
 
次に了平と山本が「ボクシングは極限だぁ!!」「野球なら教えるぜ」と言いたい事を言って帰っていった。
 
それに続きハルが「わからない事があったら遠慮なく言って下さい!!ハルがお力になります!!」と力強く言い残していった。
 
それからしばらくすると、最後までいる予定だった骸の携帯が鳴り、なにやら急用が出来たと言って慌てて帰っていった。
 
残ったのは雲雀と綱吉とザンザスだった。
後は片付けだけだから帰っていいと綱吉が言ったが、なんとなく帰りづらかったので手伝った。
それに、大家の雲雀と綱吉を2人きりにしちゃいけない気がする。
ただの勘だが。
 
 
そもそも、なんだか綱吉がみんなに好かれている気がする。
仲がいいのは皆同じなのだが、骸やハルなどは特に、やたらと綱吉の世話をやきたがるしかなりベタベタくっついている。
雲雀は行動こそ起こさないが、そんな光景を不愉快そうに睨んでいた。
きっと本人は気づいてはいないのだろうが。
 
 
 
片付けも終わり、雲雀は鍵を閉めるために先に帰る2人を見送った。
 
 
 
 
「変わった人もいますけど、みんないい人達でしょう」
 
部屋に入る直前、綱吉がそう言った。
 
「あぁ」
 
 
他人を“いい人”だと思う日がくるとは思わなかった。
 
それから、こんな言葉も言う日がくるとも思わなかった。
 
 
「・・・ありが、とう」
 
 
慣れない言葉で、少し途切れた。
すると綱吉が満面の笑みで「どういたしまして」と返してくれた。
 
 
 
あぁ
 
 
これが幸せか
 
 
 
そう感じた。
 
 
 
このアパートに来てからは初めてづくしだが、どれも心地が良かった。
 
初めて、本当の幸せを知った気がした。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
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最初からだけど、ザンザスのキャラが違う気がする・・・ι
こんなアパート憧れる。
2007.11.27
 
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