小説1

□お隣さん
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「それにしても、ザンザスさんがあの有名なボンゴレ会社の社長さんの子供だったなんて・・・」
 
「今はヴァリアーの社長だ」
 
「・・・・・・え?」
 
ヴァリアー?ヴァリアーってあのヴァリアーだよね?!
最近すごく大きくなってきて、今やボンゴレと張る程の超大型会社っていうあの・・・・・・。
 
 
「ヴァリアー?!」
 
考えに考えた結果、綱吉は叫んでいた。
 
「あぁ、ヴァリアーだ」
 
「嘘・・・すごい・・・」
 
これはもう大人になったどころではない。
自分とは次元が違う。
 
 
「そんな遠い人だったんだね、ザンザスさん」
 
 
「・・・・・・・・・」
 
 
ザンザスが一瞬、悲しそうな目をした。
 
 
「・・・ボンゴレ会社社長の息子やヴァリアー会社の社長以前に、俺はザンザスだ」
 
 
「っ・・・・・・」
 
 
今わかった。
 
彼が、何が嫌で逃げ出して来たのか。
 
 
「ごめんなさい・・・」
 
「謝んな」
 
「でもっ・・・」
 
 
「それより、おまえ大学には行ってんのか?」
 
「え?あ、はい、一応・・・」
 
いきなり話が変わり、反応に遅れる綱吉。
 
「やりたい事や就職先は?」
 
「まだ・・・ですけど・・・」
 
 
一体何なのだろう。
綱吉は、ザンザスの意図が読めないでいた。
 
 
 
「・・・今、社員が少し不足していてな。誰かに入ってもらえると助かるんだが・・・」
 
「え?」
 
「大学のない日だけでいい。働いた分の給料はちゃんと払う」
 
 
「それって・・・」
 
 
 
「うちの会社で働いてみないか、綱吉」
 
 
「っ・・・」
 
 
という事は・・・・・・
 
 
 
「一緒にいて・・・いいの・・・?」
 
「当たり前だろ。こっちが頼んでんだからな」
 
 
呆れたように笑うザンザス。
 
その笑顔がすごく暖かい。
 
 
 
「・・・あんまり行けないかもしれないよ?」
 
「あぁ、学生だからな」
 
「頭も良くないよ・・・?」
 
「慣れれば問題ない。実際、学校の勉強なんて社会ではあまり役立たないしな」
 
 
「・・・俺、ザンザスの事好きなんだよ?」
 
 
「っ!!」
 
 
いきなりの綱吉の告白に、ザンザスは目を見開く。
 
 
「綱吉・・・?」
 
「ごめんね突然。でも言っておきたかったんだ」
 
そう言って真っ赤になり俯く綱吉。
 
 
 
 
 
 
5年前。
 
彼があのアパートからいなくなってから気付いた。
 
自分はすごく、ザンザスが好きだったんだなって。
 
 
5年後もそれは変わらない。
 
一緒にいた時間の何倍もの時間が過ぎているのに、忘れられない。
 
すごく会いたい。
 
 
 
 
 
今更だが、綱吉はザンザスを見れないでいた。
 
勢いで言ってしまったけれど、思えば男から告白なんかされて嬉しいはずがない。
 
ごめんなさいと謝ろうとした時、綱吉は力強く抱きしめられていた。
もちろん、謝ろうとした相手によって。
 
 
「ザ・・・ザンザス?」
 
「・・・俺もだ」
 
「へ?」
 
 
「俺も・・・おまえが好きだ」
 
 
「っ!!・・・嘘・・・」
 
 
「ここで嘘言ってどうする」
 
「だって・・・あれだよ?友達として、とかじゃないよ?」
 
するとザンザスは一旦綱吉を放し、それから彼の顎をすくって顔を上に上げさせる。
 
 
そして、優しく唇を重ねた。
 
それは一瞬で、唇はすぐに離れる。
 
 
 
「こういう意味、だろ?」
 
 
 
ニヤリと笑い綱吉を見る。
 
彼はこれ以上ないくらい真っ赤になっていた。
 
 
「ザンザス・・・ズルイ・・・」
 
「それはこっちの台詞だ。俺より先に言いやがって」
 
そしてお互い、同時に吹き出す。
 
 
楽しそうな笑い声が響く中、やっとそれぞれの親達が口を開いた。
 
 
「ザンザス!!テメェなに俺の可愛い息子に手ぇ出してんだ!!」
 
「そうじゃぞザンザス!!綱吉君はわしの会社に入ってもらうつもりじゃったのに、抜け駆けなんて許さんぞ!!」
 
「と、父さんっ」
 
父親がいる事をすっかり忘れていた綱吉は焦るが、ザンザスは余裕の笑みでもう一度彼を抱きしめた。
 
 
「残念だったな年増ども。綱吉はもう俺のもんだ」
 
その台詞に、年増と呼ばれた2人は逆上し赤くなり、ザンザスの腕の中にいる綱吉も別の意味で真っ赤になっていた。
 
そんなこんなで本日綱吉は、恋が実ったどころか就職先まで決まってしまっていた。
 
父親との再会の感動はだいぶ薄れていたのであった。
 
 
 
 
 
「ザンザスさん、これからよろしくお願いします!!」
 
 
「あぁ、こちらこそな」
 
 
 
 
 
 
 
 
5年前
 
 
悩んだのも逃げ出したのも
 
無駄ではなかった
 
 
その行為が
 
自分を綱吉に逢わせてくれた
 
 
あのアパートでの出会い
 
それはきっと
 
偶然ではなく必然
 
 
 
ただ
 
これが初恋だとは
 
きっと恥ずかしくて今は言えない
 
 
 
ずっとずっと先
 
 
いつか
 
 
笑って話せたらいい
 
 
 
その時
 
 
おまえはどんな顔をするだろう
 
 
 
たぶん
 
 
今と変わらない笑顔で笑っている
 
 
そんな気がした
 
 
 
 

 
 
 
 
→後書き
 
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