小説1

□お隣さん
12ページ/14ページ


 
ベンチには、1人の男がこちらに背を向けて座っていた。
黒いスーツを着ている。
 
9代目は息子の名を呼んだ。
 
 
 
「ザンザス、待たせたのぅ」
 
 
 
「・・・・・・え・・・?」
 
 
 
綱吉は思わず声を発する。
 
「どうした?」という家光の呼びかけも、今の彼には聞こえていなかった。
 
 
 
“ザンザス”
 
 
そう聞こえた。
 
 
その名で思い浮かぶのは1人しかいない。
 
 
よくある名前でもない。
 
 
 
 
スーツの男がゆっくりとこちらを向く。
 
 
 
 
 
 
 
「「・・・・・・・・・・・・」」
 
 
 
 
 
 
 
ざっと4〜5秒、2人は目を見開いて互いを見つめ合っていた。
 
 
それを不審に思った9代目が、2人を交互に見て尋ねる。
 
 
「2人は知り合い・・・なのかね?」
 
その台詞で我に返った綱吉とザンザス。
やっと状況が飲み込めてくる。
 
 
「おいクソジジイ、会わせたい親戚ってまさか・・・・・・」
 
 
「社長さん、貴方の息子ってまさか・・・・・・」
 
 
 
 
「綱吉?!」
 
 
「ザンザスさん?!」
 
 
 
 
同時に叫んでいた。
 
 
それに9代目は「おぉ、やっぱり知り合いじゃったのかぁ〜、だが何故じゃ?」と大して驚かずに笑う。
 
だが家光は「ツナぁ、どうしてそんな奴と知り合いなんだぁ?!」と半狂乱である。
 
そんな外野の声は向けられた2人には届かず、綱吉は1歩、また1歩と前に進む。
 
ザンザスも歩み始めた。
 
そしてあと数歩というところで綱吉は駆け出し、ザンザスに思いきり抱きつく。
 
 
「ザンザスさん・・・久しぶりです」
 
「あぁ、そうだな、5年ぶりか」
 
優しく綱吉を受け止め、ザンザスは言う。
 
今度ばかりは少し目を見開いて驚く9代目と顎が外れんばかりの家光は、ただその光景を見ているしかなかった。
 
 
 
「あの時、ちゃんと挨拶出来なくてごめんなさい」
 
綱吉はザンザスの胸に顔をうずめながら呟く。
 
 
これが1番心残りだった。
 
あんな別れしか出来なかった自分に腹が立った。
 
 
それでも、会う勇気も方法もなくて。
 
5年間、ずっと後悔してた。
 
 
 
 
「ありがとう」
 
「?」
 
突然のザンザスの台詞に、綱吉は顔を上げて首を傾げる。
その目は少し潤んでいた。
 
そんな彼の頭を撫でながら、ザンザスは続ける。
 
 
「おまえがいたから、今の俺がいる。まだ足らないものは沢山あるが、それでもだいぶマシになったとは思う」
 
 
それはきっと本当なのだろう。
 
以前のザンザスとは雰囲気が少し違う。
 
落ち着いたとか、丸くなったとか、まぁでも一言で言うなら・・・・・・
 
 
「大人になったね、ザンザスさん」
 
見た目だけでなく、中身も。
 
「テメェはあんまり変わらねぇな」
 
そう言って頭をぽんぽん叩くザンザスに、身長の事だと察したのか「これでもちょっとは伸びたんですよっ」と少し怒ってみせる綱吉だった。
 
 
 
この状況に全くついていけていない9代目と家光。
 
お互い、目の前の息子になんと言っていいかわからなかった。
 

 
 
 
 
 
 
―――――――――――――――――――――
再会です。
ちょっと間が空いたので感覚が・・・ι
2007.12.17
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ