小説1

□お隣さん
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土曜日。
 
綱吉はボンゴレ会社内にある大きな庭園にいた。
 
大学から帰る途中、サラリーマン風な男の人に手紙を渡された。
 
それは、今や日本で知らぬ者はいないと言っても過言ではない程有名な大型会社、ボンゴレの社長からだった。
 
訳がわからず封を切ると、土曜に迎えに行くからとだけ記してあった。
 
 
そして本当に迎えが来て、今ここにいるのである。
 
 
 
「・・・やっぱり広いなぁ・・・・・・それに綺麗」
 
 
「嬉しい事を言ってくれるね」
 
 
ハッとして振り返ると、杖をついたおじいさんが立っていた。
 
もしかして・・・・・・
 
 
「あの・・・・・・社長さん・・・ですか?」
 
「そうじゃよ。よく来てくれたね、綱吉君」
 
ボンゴレ会社社長である9代目は、穏やかに微笑んだ。
 
 
「あの・・・・・・俺、どうして呼ばれたんでしょうか・・・。もしかして借金の事ですか・・・?」
 
ボンゴレは関係なかったはずだが。
 
「いや、実は君に逢わせたい人がいるんじゃよ」
 
 
「逢わせたい・・・人・・・?」
 
 
すると、太い柱の陰から誰かが出てきた。
 
 
 
「っっ・・・・・・・・・え・・・・・・?・・・嘘・・・・・・」
 
 
綱吉は思わず自分の頬を抓った。
 
ものすごく痛かった。
 
 
夢じゃない。
 
 
 
固まっている綱吉の肩を9代目が支え、前に歩かせる。
 
 
 
 
「・・・本当に・・・・・・本物・・・・・・?」 
 
 
「・・・あぁ」
 
 
 
 
 
「・・・生きてたんだ・・・・・・・・・父さん・・・・・・」
 
 
“父さん”と呼ばれた瞬間、家光は我が子を抱きしめていた。
 
 
「・・・ツナ・・・・・・やっと会えた・・・・・・!!」
 
 
 
「・・・父、さん・・・・・・・・・ぅ・・・・・・うわぁぁぁ――――――――んっっ」
 
 
名前を呼ばれてやっと実感出来たのか、綱吉は家光にすがりつき大声で泣き出した。
 
今まで甘えられなかった分を取り戻すかのように。
 
 
 
 
 
 
 
 
綱吉が落ち着くと、3人はベンチに座り、今までの事を語り合った。
 
家光は海外で仕事をして、いざ日本に帰ってきたが家は売り払われ、我が子はいなかった。
 
それから懸命に捜したが見つからず、友である9代目に捜索を頼んだというのだ。
 
 
綱吉も、家を売り払った経緯を話し出した。
 
今も5年前と同じアパートに住んでいる事も。
 
 
 
「ごめんなさい・・・俺が馬鹿だったばっかりに・・・・・・」
 
「何言ってんだ!!そんな事気にするな。・・・そうか・・・いろいろ大変だったんだな・・・」
 
家光は我が子を抱きしめられながら頭を撫でる。
 
綱吉はこの歳にもなってこんな事をされて少し照れ臭かったが、嬉しかったのでされるがままになっていた。
 
 
「それにしても、綱吉君を騙すとは・・・許せん!!」
 
そのサギ師共にはどんな報復をしてやろうか考えを巡らせていた9代目だが、ふとある事を思い出した。
 
 
「2人共、感動の再会のところ悪いんじゃが、もう1人会ってほしい奴がおるんじゃ」
 
「会って・・・ほしい人・・・・・・?」
 
「家光は知っとるじゃろ。わしの息子の――・・・」
 
「ダメです!!」
 
9代目の言葉を遮り、家光は怒鳴った。
 
「貴方の息子ですからあまり言えませんが、あんな奴とウチのツナを会わせたらどうなるか・・・・・・まず確実に怖がります!!」
 
「ま・・・まぁ顔はわしに似ず凶悪顔になったが・・・・・・」
 
綱吉には話がよめない。
 
 
「何の話ですか・・・?」
 
「君の親戚の話じゃよ」
 
 
「親戚・・・・・・」
 
 
と言っても遠い親戚なのだがね、と9代目は苦笑する。
 
「わしの息子に会ってほしいんじゃ。顔と口と性格は悪いが・・・・・・まぁなんとかなるじゃろ」
 
それって全部悪いんじゃ・・・と思った綱吉だが、なんとか飲み込んだ。
 
「って事は・・・社長さんとも親戚・・・・・・って事になるんですか・・・?」
 
「そうじゃよ」
 
「っ・・・・・・」
 
 
信じられない。
 
こんな大型会社の社長さんと親戚だったなんて。
 
 
「息子は向こうに待たせてある。悪いが移動してくれんかね」
 
そうして、広い庭園を少し回り、また同じようなベンチがあった。
 
9代目を先頭に3人でそこへ向かう。
 
 
綱吉は興味半分、不安半分で後に続いた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
―――――――――――――――――――――――
親子感動の再会。
もう少しです、もう少し。
2007.12.13
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