小説1

□お隣さん
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―――5年後。
 
ザンザスは大型会社ヴァリアーの社長になっていた。
 
ある程度経験や実績を積んではいたが、ここまで早く、若く社長になった者は前歴がない。
そしてヴァリアーは、彼の父親が経営するボンゴレと同等に競い合える位にまでになっていた。
 
 
 
 
5年前。
 
家に戻ったザンザスは、とりあえず父親と話をしてみることにした。
そして今まで思っていた事を全てさらけ出してみた。
 
すると――
 
「何を言っとる。誰がボンゴレをおまえにくれてやると言った。わしゃまだまだ現役でいけるぞぃ。悔しかったらボンゴレに張る位の会社をたててみる事じゃな」
 
と、飄々と言われた。
 
その時どんなに拍子抜けしたことか。
 
別に悔しかったとかじゃないが、とりあえずこのタヌキを叩き潰そうと思い、ただひたすらに頑張った。
 
 
 
それでも、どうしても綱吉の事が忘れられなくて。
 
社長になってからは縁談の話もいくつか寄せられたが、応じる気にはなれなかった。
 
あのアパートに行こうと何度も思った。
 
でも行けなかった。
 
一応、自立はしたつもりだ。
 
精神的にも強くなったと思う。
 
それでも会えないのは、やはりあんな別れ方をしたからだろうか。
 
涙を流しながら無理矢理笑った彼の顔が忘れられない。
 
あれからどうしているのだろう。
 
大学には行ったのだろうか。
 
「就職するには大学卒業は必須ですから、出来れば入りたいです」と彼が言っていたのを思い出す。
 
 
 
―――会いたい。
 
もう一度あの笑顔がみたい。
 
美味しい手料理が食べたい。
 
声が聞きたい。
 
 
会って、抱きしめたい―――。
 
 
 
 
 
いつものようにそんな事を考えていると、1本の電話が入った。
珍しく父親からだった。
 
 
「なんだ」
 
『久しぶりにかけてやったのに、随分と冷たいのぅ』
 
「くだらん用事なら切るぞ」
 
『まぁそうカリカリするな。・・・実はな、おまえに逢わせたい子がおるんじゃ』
 
「俺は会いたくない」
 
『そう言うな。ついこの間、わしの友人であり親戚でもある家光が海外の仕事から日本に戻ってきてな、なんと息子が行方不明なんじゃと』
 
「だから何だ」
 
『その子が最近、見つかったんじゃよ。だからおまえにも逢わせようと思ってな。親戚なのに一度も会わないのはおかしいじゃろうに』
 
「・・・くだらん。俺はそんなに暇じゃない」
 
『家光にも会っといて損はないぞ?彼は世界中を飛び回っていたんじゃからな、これからさらに広がろうとしているヴァリアーにとって、彼の話はかなり参考になると思うがの?』
 
 
「・・・・・・いつだ」
 
『今週の土曜でどうじゃ』
 
「・・・いいだろう。詳細はファックスで送れ」
 
『よしわかった。・・・それにしても、家光の息子は可愛いぞぃ。あれは絶対に母親似じゃな。幼い時の写真は家光から見せて貰っていたが、実際に会った事はまだなくてのぅ。この前こっそり成長した彼を見たが、その可愛さは健在じゃ。さらに――』
 
―――ブチ
 
―――ツー・・・ツー・・・
 
 
たまらずザンザスは電話を切った。
 
・・・全く、どうして親戚なんぞに会わなければいけないのか。
 
 
 
そこへ扉をノックする音が聞こえ、「入るぜぇ」という声と共にスクアーロが入ってきた。
 
「う"お"お"お"い!!ボス、この前対談した会社が―――・・・ぶへぇっ!!」
 
彼の報告は最後まで告げられず、機嫌の悪いザンザスによって頭を壁にのめり込まされた。
 
「カスが」
 
颯爽と去っていく上司とスクアーロを見比べ、新入社員のベルとマーモンがクスクスと笑う。
 
 
「馬鹿だねスクアーロ、ボスの機嫌が悪い時に部屋に入るなんて自殺行為だよ?」
 
「ちなみに治療費は自己負担だからね」
 
後頭部を押さえながら、スクアーロはため息をつく。
自分の方が歳も上で上司、むしろこの2人は新入社員のはずなのに、平気でタメ口を使う上にこうして助けもせずに傍観する事も。
あとはオカマや堅物と個性の強い奴らが多数で、マシな人間がいない。
それでも会社がここまでこれたのは、やはり社長のザンザスの力と言っていいだろう。
しかしその社長も、暴言暴力当たり前な自己中俺様主義などうしようもない人間だ。
 
 
「職場・・・替えるかぁ・・・?」
 
今度入ってくる新入社員がこれまたどうしようもない奴だったら辞めてやろう!!と心に誓うスクアーロだった。
 
 
 
 
 

 
 
 
 
―――――――――――――――――――――
先がよめてきてしまいますね。
スクアーロはどこへいってもこんな役回り。
歳などは・・・あまり気にしないで下さると嬉しいです。
2007.12.09
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