小説1

□お隣さん
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お隣さんは、初恋の人でした。
 
 
 
 
 
 
 
 
大型会社の社長である父を持ち、自分は生まれた時から将来の道が決められていた。
 
 
だが、高校を卒業した直後、ふと疑問に思った。
俺はこのまま、決められた道を何も考えずに進んで行っていいのだろうか・・・。
周りの言う事に従い、その期待に応え、いずれは父の跡を継ぐ。
 
 
それじゃあ俺は?
 
 
一体何なんだ?
 
 
俺の価値は何だ?
 
 
“社長の息子”?“次期跡取り”?
 
 
それは、俺じゃなくて誰でもいいんじゃないのか・・・?
 
 
 
誰がこの俺を、俺自身を見ている?
 
父や会社など関係なく、俺を、“ザンザス”を見ているのは・・・・・・。
 
 
 
いや、誰も見てなどいない。
 
同級生達も、ただ媚びを売るばかり。
 
“あのボンゴレ会社の社長息子”や“次期ボンゴレ会社社長”などという目でしか見ていない。
 
計算高い笑顔。嘘八百な褒め言葉。
 
 
もううんざりだ。
 
 
 
 
 
そして俺は
 
 
 
 
 
家を出た。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
だがボンゴレ会社の力はそう甘くはない。
カードと金は持ってきたが、カードは足がつくためあまり使えない。
金は一応持ってきたが、それでも量は限られてくる。
 
そして、あまりいい所に住んではすぐに見つかる。
 
 
 
だから、なるべく安っぽい・・・むしろここにホントに人が住んでるのかって位ボロっちいアパートを選んだ。
 
そこの管理人・・・大家というのかわからんが、とにかくそいつには通常の2倍の家賃を払っていくという事で誰が訪ねてきても口を閉ざせと言っておいた。
たまにある事なのか、そいつは怖がりもせずにその条件をのんだ。
 
 
 
 
あてがわれた2階の部屋へ入ると、かなり狭かった。
今まで自分が住んでいた家が周りより多少は豪華で広いのは認識していたが、それにしてもここは想像以上の狭さだ。
台所は一応ある。小さいコンロが2つあるだけだが。
トイレは一応それぞれの部屋についているようだ。
シャワーは共同で、1階に設置されていた。
 
 
一通りそのアパートを把握すると、最低限の荷物を適当に置き、とりあえず寝ることにした。
布団は、ボロいが押入れに入っていた。
 
 
 
今までで1番寝心地が悪かった。
 
だが、初めてとも言える親への反抗に、少しだけ達成感を感じていた。
 
これまでは反抗こそしなかったが、心の中では主に親や同級生に終始毒づいていた。
 
 
今、あの忌々しい家から出た事で、自由を噛み締めていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
大家には口止めしたが、アパートの住人はそうもいかない。
数人ではあるがちゃんとこんな所でも生活している者達がいるらしい。
 
そいつらと顔を合わせないように、なるべく早朝か深夜にしか出かけないことにした。
 
 
 
 
 
だが、やはり人の生活スタイルというのは人それぞれのようで、そのアパートに住み始めてから1週間程した頃、俺は見事にアパートの住人のひとりと鉢合わせした。
 
 
 
 
 
 
「「・・・・・・・・・・・・」」
 
 
 
深夜、ちょうど買い物から帰ってきて部屋の鍵を開けて中へ入ろうとした時、隣のドアが開いた。
驚いて一瞬反応が遅れ、中に入り損ねた。
 
 
向こうも相当驚いたのか、ドアノブを握ったまま固まっていた。
 
 
 
 
「もしかして・・・お隣に引っ越してきたんですか・・・?」
 
ドアの周りには電気なんて気の利いたものはなく、ほとんど真っ暗だった。
そのため、相手の顔がよく見えなかった。
だが、とりあえず小さい事はわかった。
 
 
「・・・そうだ」
 
返事くらいはした方がいいだろう。
するとそいつは「やっぱり〜」と言って嬉しそうに近づいてきた。
 
「どうも最近、お隣から人の気配がすると思ったんです〜。でも大家さんからは何も聞いてないし・・・気になってたんです」
 

男・・・だ。中学生・・・くらいだろうか。
隣の事など興味もなかったし知る必要もなかったため、全然知らなかった。
 

そいつはさらに言葉を続ける。
 
「俺、ここに住んでる沢田綱吉っていいます。高1です」
 
「ザンザス・・・高校を卒業したばかりだ」
 
するとそいつから驚嘆の声が上がった。
 
「すごいです!!もっと年上かと思いました〜。背だってすごく高いし、顔は・・・暗くてよく見えないんですけど大人っぽいし!!ザンザスさん・・・ていうと外人さんですか?」
 
 
俺はおまえが高1って方がビックリだと言おうとしたが、やめておいた。
このくらいの年代は、得てして年上に見られたいものなのだ。
とりあえず「イタリア人だ」と言うと、「へぇ〜日本語お上手なんですね〜」と関心された。
小学校に上がる頃には日本にいたから、そこまですごい事でもないのだが。
 
 
 
「あ、もしかして一人暮らし・・・だったりします?」
 
「あぁ」
 
「俺もなんです。なので何かあったら気兼ねなく言ってくださいね。―――っと、もうこんな時間。すみませんこんなトコで長話してっ」
 
わたわたとそう言ったかと思うと、「早く寝なきゃ明日起きられないっ」と言った。
手に持っている物を見ると、どうやらこれからシャワーを浴びに行くらしい。
 
 
「それじゃあ、失礼しますっ」
 
そう言って、小走りに階段を降りていった。
 
 
 
 
 
「なんだったんだあいつは・・・・・・」
 
 
ずいぶん騒がしい・・・というか慌しい奴だった。
 
そして、聞かれるままに自分の名前を言っていた事に気づいた。
年齢や種族まで・・・。
何故だろう。全くといっていい程、警戒心を抱かなかった。
 
 
 
 
 
「沢田・・・綱吉・・・・・・」
 
 
 
まだドアの前に突っ立ったまま、俺はそう呟いていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
――――――――――――――――――――――――
拍手のものだったのですが、続きそうだったので何となくこっちに移しました。
・・・いろいろとすみません気まぐれで・・・・・・ι
パラレル楽しい。
2007.11.20

 
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