小説1
□はた迷惑な愛情表現
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「でも、だからかなぁ」
「あぁ?」
紅茶を入れて一息つく。
ツナは砂糖を大量に入れ、ザンザスはストレートで飲む。
「まずスクアーロに会ったからかがんでもらって抱きしめたんだけど、すぐにこっちも見ないで走ってっちゃったの。怒ってたのかなぁあれは……」
「…………」
「あ、でもね、ルッスーリアは抱きしめ返してくれたんだよっ。…ちょっと苦しかったけど。あとはベルにもやったら、王冠が邪魔だからって自分から取ってくれたの」
「…………………」
「レヴィは固まってたなぁ。放しても床に膝ついたまま動かなかったし。マーモンはいつも抱きしめてるからあんまり新鮮味はなかったけど、スリスリ〜ってすり寄ってきてくれたよっ」
「…………………………」
すっかり黙ってしまったザンザスに、ツナは「聞いてる?」と顔を覗き込む。
「………えっ?!ちょっ…何?!」
覗き込んだその顔は、この世のものとは思えない程恐ろしかった。
これならマフィアはもちろん、死神だろうが悪魔だろうが一瞬で、草食動物が肉食動物を見た時のように逃げていくだろう。
「どどどうしたのザンザスっ?!」
何か怒らせるような事を言っただろうかとツナは焦る。
「……いや、急用が出来た。ちょっと行ってくる」
恐ろしい顔のままユラリと立ち上がったザンザスをツナは必死で止める。
「ダメだよザンザス!!今の感じだとザンザスが通った道は屍だらけになりそうだからっ」
想像しただけでも恐ろしい。
「安心しろ、ターゲットは決まっている」
「安心出来ない―――っ!!どうせスクアーロらへんでしょ?!ザンザスの機嫌が悪いといつもスクアーロが被害に会うんだよ?!何も悪くないのに可哀想だよっ」
「……あのカスをかばうのか。………まぁ確かに今回悪いのはあいつじゃねぇな」
「でしょ?」
ほっと安心するツナ。
次に言われる台詞は予想すら出来なかった。
「今回悪いのはおまえだな」
「………へ?」
おまえって誰?と思ったが、今この部屋には自分とザンザスの2人だけ。
つまり……
「俺の…せい…?」
大きく頷かれた。
「何で?!」
「テメェが誰かれ構わず抱きしめるからだろ」
「だからそれは愛情表現で……もうしないし!!」
「そうしろ」
「だから怒らないで?」
「…………」
上目使いで少し不安そうな顔をしながらお願いするツナ。
相手がザンザスでなくともかなりの凶器になるだろう。
「……わかった」
それ以外彼に何が言えただろう。
「ありがと、ザンザス!!」
ツナはザンザスにギュッと抱きつく。
満面の笑みで。
ザンザスも愛しい恋人を抱きしめ返した。