小説1

□はた迷惑な愛情表現
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ツナがヴァリアーの拠点地に遊びに来た。
ある目的を持って……。
 
 
元々は女であるツナ。
周りは、10代目候補の沢田綱吉は男と思っているので、バリバリ女の子な格好をしていればまず心配はないのだ。
 
 
しかしツナが来るちょうど数分前、ザンザスは仕事で出かけてしまっていた。
 
 
 
 
それから日付が変わり、次の日。
 
 
「ザンザスっ」
 
やっと彼が帰ってきた。
ツナは急いで自らの恋人の元へ向かう。
 
部屋に入ると、ちょうど着替えて一服しているところだった。
 
 
 
「おかえり。それと、お疲れ様」
 
そしていつものように彼に飛びつき…………そうになり、ツナはすんでのところでとどまった。
 
「……?」
 
その行動を不審に感じ、ザンザスは眉をしかめる。
仕事がどんなに面倒臭くても、ツナの笑顔と抱きしめた時の感触が全てを癒してくれるのだ。
だが今日はそれがない。
 
「どうした」
 
「あ…あのね、ちょっとソファーに座ってじっとしててくれる?」
 
「あ?……あぁ」
 
不審に思いながらも、ザンザスは言う通りにする。
 
するとツナが目の前に来て、腕を広げた。
 
そして―――……
 
 
「???!!!」
 
 
ザンザスを抱きしめた。
自分の胸に彼の頭をうずめさせ、愛おしそうにギュッと抱きしめた。
ザンザス、今までにないほど混乱中。
頭の中が真っ白になるなんてありえないと馬鹿にしていたが、今わかった。
疑問符すら浮かばない。
というか胸が当たっている……そう思ったのはざっと2〜3秒たってからだった。
 
満足したのか、ツナはザンザスを解放して満面の笑みで彼の隣に座った。
若干まだ混乱しているザンザス。
得意のポーカーフェイスなどとうに崩れている。
 
あまりにも彼が何も言わないので、ツナはだんだん不安になってきた。
実際彼は何も言わないのではなく言えなかったのだが。
 
 
「えと……ごめん、嫌だった…?」
 
その言葉にザンザスは我に返る。
 
「いや……ビックリした」
 
これ以上ない程。
 
その素直な返答にツナは思わず笑ってしまった。
 
笑いが収まると、ようやく今回ここに来た目的を話し始めた。
 
 
 
数日前、テレビを見ていたら、子供は母親に抱きしめられた時に1番愛情を感じると言っていた。
だから大好きな人を抱きしめようと、そう思ったのだ。
 
普段は体格の差もあり、ザンザスがツナを抱きしめる形になってしまう。
つまり、ツナは抱きしめられるだけでなく抱きしめたかったのだ。
大好きな人達を………。
 
「って……ん?“達”?」
 
「うん!!ホントは1番にザンザスを抱きしめたかったんだけど、昨日いなかったから…」
 
「“から”?」
 
「ヴァリアーのみんなに先にしちゃったっ」
 
 
ズガーン、と何かが落ちてきたような感覚がして、次の瞬間今度は腹の中が真っ黒になるのがわかった。
つまりアレだ、今のをカス鮫やオカマやエセ王子やチビやデカブツにやったと………。
というか思春期の女の子が恋人以外の異性を抱きしめるというのはどうだろう。
 
 
「……綱吉、おまえ、俺の恋人っつー自覚はあんのか?」
 
「へ?!ぁああるけど?!」
 
いきなり何さというように慌てるツナ。
改めて恋人とか言われると少し照れる。
 
ザンザスはハァ〜とため息をつき、座ったままギュッとツナを抱きしめた。
 
「だったら誰かれ構わずんな事すんな」
 
「……わかった。…でもみんな大好きなんだもん…」
 
「それは俺に対する“好き”と同じもんなのか?」
 
「………違う」
 
そう呟いて、ツナはザンザスの腕の中で「ごめんなさい」と言って彼の背中に手を回した。
 

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