小説1
□最高の誕生日プレゼント
1ページ/3ページ
※綱吉は幼い頃にイタリアで暮らしていて、ヴァリアーとは仲良しな設定です。
イタリアにいた為イタリア語は話せますが、他の設定は原作通りです。
10月14日。
「はぁ……」
綱吉は窓の外を眺めながらため息をつく。
誕生日のこの日に、よりによって大嫌いな数学と英語の授業が重なっていた。
そう、今日は綱吉の誕生日なのだ。
まぁ、だからといって何がある訳でもないが。
それでも、朝一番に「おめでとう」と言ってくれる友人がいることは、なんだか恥ずかしいがそれ以上に嬉しい。
家に帰ると、手作りケーキも用意されているだろう。
いつも通りに授業が終わり、放課後。
まだ大部分の生徒が残る中、何やら廊下が騒がしかった。
「何だろう……?」
「何があっても、俺が片っ端から片付けます!」
ダイナマイトを構える獄寺に苦笑する綱吉。
山本はとっくに部活へ行っていた。
――バンッ!!
勢い良く教室のドアが開かれる。
教室内にいた生徒達が一斉にそちらを見た。
「う、そ………」
そこにいたのは、学校に…というか、この並盛に似つかわしい真っ黒な集団だった。
生徒達が恐怖で固まる中、獄寺は眉をひそめ、綱吉はというと、なんとその集団目がけて飛び込んで行った。
「ザン!スク!ルッス!ベル!マーモン〜!」
呼ばれた男達は、先程の目つきの悪さは何処へ行った!というくらい緩い顔をして綱吉を迎える。
「久しぶりだな、綱吉」
「元気だったかぁ?」
「あらぁ、また一段と可愛くなって〜」
「しししっ、ちなみにレヴィは留守番」
「綱吉、抱っこ」
そう、突然現れた真っ黒な集団は、イタリアにいるはずのヴァリアーだった。
綱吉の頭を撫でたり抱きついたり、とにかく可愛がる。
それもそのはず、みんな、綱吉と会うのは3年ぶりなのだ。
最後に会ったのは、綱吉が旅行でイタリアに来た時だ。
「みんなすごく久しぶり!……でも、どうしたの?いきなり」
するとザンザスは、イタリア語で話し始めた。
『老いぼれが仕事を詰め込みやがって、なかなか日本に来られなかった。だが今回、仕事で日本に来られた』
『仕事…?日本で?』
綱吉もイタリア語で返す。
幼い頃イタリアに住んでいた為、イタリア語が出来るのだ。
だが、クラスメイト達が驚くには十分だった。
何せ、英語もダメダメな綱吉が流暢にイタリア語で会話しているのだ、驚きもする。
獄寺だけは、眉をひそめたまま会話を聞いていた。
『老いぼれから伝言だ。…綱吉、イタリアへ来る気はあるか?』
『え……?』
するとルッスーリアは、隠し持っていたクラッカーを鳴らした。
『ツナちゃん、お誕生日おめでとう!!』
それに続き、他のメンバーからも『おめでとう』と言われる。
『え……え…?』
混乱しまくっている綱吉を見て、スクアーロが苦笑しながら言った。
『この誕生日を機にイタリアへ来ねーか、って事だぁ』
『イタリアに……でもいいの?確か……』
9代目に、まだ時期が早いからとイタリアで暮らす事を許されなかった。
イタリアで暮らせば、綱吉がボンゴレ10代目候補だとバレてしまう可能性が高い。
日本ならば安全だからと、イタリアへは数年に一度の旅行しか許されなかったのだ。
『しししっ、9代目がそろそろいいだろうってさ』
『学ぶべき事は沢山あるしね』
ベルに続き、綱吉の腕の中でマーモンもそう言う。
『イタリアに……行ける……っ』
ずっと行きたかった。
みんなと一緒にいたかった。
たとえ闇の世界へ足を踏み入れようと、10代目になろうと、それでみんなといられるならば、喜んでマフィアになる覚悟はある。
『10代目!俺もついて行きます!』
『獄寺君………うん、ありがとう!』
そんな感動的な雰囲気の中、当然、全てイタリア語で行われていた出来事をクラスメイト達は理解出来なかった。
勇気ある1人がそっと綱吉に声をかける。
「あ〜……沢田?一体何がどうなって……?」
そこでようやくここが教室だと思い出した綱吉は、「あ"〜……」と頭をかいた。
「えっとぉ……」
「綱吉はイタリアへ行く」
「ちょっ、ザン?!」
会話に割り込んできたザンザスに綱吉が焦る。
「イタリア…?」
クラスメイト達は顔を見合わせた。
「うん…そうなんだ…。今までありがとう、みんな」
申し訳なさそうに、だがそれ以上に嬉しそうに微笑む綱吉。
そして「山本には申し訳ないけど……後で説明するしかないかな」と呟いた。