小説1
□そして彼は君臨した
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リング戦後、ツナはボンゴレ10代目にほぼ確定、あのヴァリアーですら手中に治めてしまっていた。
せめて学校では普通に過ごしたいとダメツナを演じ続けていたツナだが、たとえ成績優秀運動神経抜群な彼にも、予想しきれない事は起こるものだ。
今日がまさに、そうだった。
「ツ〜ナ、昼飯どうする?」
「ん〜…屋上はちょっと暑いよね…」
「10代目!ならば教室でいただきましょう!」
昼休み。
いつものようにツナは獄寺、山本と一緒にいた。
教室で昼食を食べ始めた3人だが、廊下がいつもより騒がしい事に気付く。
「…………嫌な予感がする」
ツナが呟いた。
獄寺が聞き返そうとした瞬間………教室のドアが勢い良く開いた。
「う"お"お"ぉぉい!いるかぁ!?綱吉ぃ!!」
「「「……………」」」
呼ばれたツナは叫んだ張本人を見る。
言うまでもないが、入って来たのはヴァリアーのスクアーロだった。
クラスメートは突然の外人出現に驚き、その目つきの悪さに怯える。
そんな中、1番怯えそうなツナが、冷ややかな目でスクアーロを見ていた。
「………おいカス」
………「カス」!?
この明らかにヤバそうな人に向かって「カス」!?
クラスメートは驚きながらも、心の中でツッこむに留める。
とてもじゃないが口に出せない。
それに、ツナの雰囲気がいつもと違う事も気になっていた。
「学校にまで来て……何の用?返答次第じゃ窓にその空っぽな頭を叩きつけて放り出してやろうか?」
「っ……………」
そこで初めて、スクアーロは自分の身の危険に気付く。
そんな中、獄寺がツナにそっと耳打ちした。
「10代目っ、ここ学校です、ヤバイですよっ」
「何?隼人、俺の邪魔すんの?」
「………………いえ……」
完全にキレているツナに、獄寺は静かに数歩下がる。
そして、そういえば昼休み前の授業でツナは教師から散々頭が悪い事をバカにされていた事を思い出した。
教師なんかよりずっと頭の良い彼にしてみれば、イライラもするだろう。
たとえダメツナが演技でも。
それでも平穏の為にぐっと堪えたツナ。
だがそこに、守ってきた平穏をぶち壊すようにスクアーロが来てしまったという訳だ。
「俺の築き上げた平穏をぶち壊したんだ、それなりの覚悟は出来てんだろうな?」
「い"っ……いや……」
美しい笑みを浮かべながらスクアーロに歩み寄るツナ。
その顔は、誰が見てもため息が出る程美しかった。
だがスクアーロは知っている。
その笑みが彼のキレる前触れ……いや、すでにキレているという事を……。