1周年アンケート小説置き場

□すれ違い
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帰り道。
綱吉はザンザスの腕の中で居づらそうにしていた。
 
「綱吉?どうした?やっぱり怖かったか?」
 
「……ん…かってにでてってごめんなさい…」
 
「無事ならそれでいい」
 
「でもっ……」
 
綱吉は顔を上げる。
だが動いたために、足がザンザスの脇腹に当たってしまった。
 
「っっ………」
 
一瞬苦い表情になった彼を綱吉は見逃さない。
 
「ざんざす?どうしたの?」
 
自分の足を退けてみれば、ザンザスの白いシャツに赤い染みが。
傷口が開いてしまったのだ。
 
「ざんざすっ、ちが……」
 
「大した事ねぇ、気にすんな」
 
これだけ大量の血が出ていて、気にならない訳がない。
綱吉は降りると言ってきかなかったが、ザンザスは放そうとしなかった。
 
「いたいの?けがしたの?だいじょうぶ?」
 
「問題ない」
 
だが平気そうに見えるその表情も、相当辛そうなのが綱吉にはわかる。
きっと自分が勝手に外へ出たからだ。
全部自分が悪いのだ。
 
 
「うっ……」
 
また泣き出しそうな綱吉に、ザンザスはビクッとした。
 
「どうした?!」
 
「うっ…ひっく……つっくん……またざんざすにきらわれた…?」
 
「また?」
 
嫌った覚えなど断じてない。
というかありえない。
 
だが綱吉は続けた。
 
「だって、しばらくつっくんとあわないって……つっくん……きらわれちゃっ……ひっく………っ」
 
「……………………」
 
ザンザスの中で全てが繋がった。
 
つまり彼は、自分がしばらく会えないと言ったのを嫌われたと勘違いし、それで家出まがいの事をしてしまったのだ。
 
っっどうにも可愛すぎる…!!
 
 
優しく綱吉の頭を撫でると、ザンザスは言った。
 
「綱吉、俺がおまえを嫌いになるなんて事は万に一つもありえねぇ。かっこ悪ぃが、ちょっと怪我しちまっただけだ」
 
「ほんと?けがはもういいの?」
 
「あぁ」
 
すると綱吉はニパッと笑った。
脇腹の事など忘れている。
ぎゅ〜っとザンザスに抱きついた。
 
「ざんざす、だいすき!!ありがとう!!」
 
「あぁ。俺も愛してる」
 
 
 
 
 
屋敷に戻ると、奈々が駆け寄って綱吉を抱きしめた。
良かった良かったと泣きながら微笑み、ザンザスに何度もお礼を言う。
それからおろおろしっぱなしだった9代目も姿を現した。
 
「おぉツナ君!無事だったか!」
 
だが奈々がすぐに綱吉をザンザスに渡してしまったので、抱きしめる事は叶わなかった。
 
 
 
 
そして次の日。
ザンザスは傷が広がったためにまた自室で安静。
綱吉はお見舞いだと言って訪れては、懸命に看病するのだった。
 
その一生懸命な姿に、傷の痛みなどどこかへ飛んでいってしまった事は言うまでもない。
 
 
 
 
 
 
 
→後書き
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