1周年アンケート小説置き場

□すれ違い
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次の日。
ボンゴレアジト内は大騒ぎだった。
 
何を隠そう、10代目候補の沢田綱吉が消えたのだ。
皆必死に捜し回る。
といっても外部に知られてはまずいのでそっとだが。
 
 
その異変は、自室で安静にしていたザンザスも感じ取っていた。
 
「……何なんだ一体…」
 
胸騒ぎがする。
超直感などなくてもわかる。
 
ザンザスはゆっくり起き上がると、静かに外へ出た。
 
角まで行くと、反対側から部下と思われる話し声が聞こえてくる。
 
 
「まさかあの方が行方不明だなんて…」
 
「また迷子じゃないのか?」
 
「それがさ、部屋にいたところ、母親が目を離した隙にいなくなったんだと」
 
「早く捜さなきゃだな」
 
「あぁ」
 
 
どうやら誰かがいなくなったらしい。
だがザンザスには「母親」という言葉が引っかかった。
ここでそんな単語が出てくるという事はまさか……
 
その予想は、次の部下達の会話で確かになった。
 
 
「とっとと捜そうぜ、綱吉様を」
 
 
「っ??!!」
 
ザンザスは目を丸くすると、すばやく部下達を捕まえて問いただした。
 
 
「……おい、綱吉がいなくなったってのは本当か」
 
「ひぃっ」
 
部下達は、まさかザンザスが聞いていたとは知らず凍りつく。
 
「……おい」
 
「ひっひぃ〜〜っ……ほ、本当ですっ」
 
詳しく聞くと、どうやらいなくなったのは今日の昼過ぎ。
まだ数時間しかたっていない。
子供の足でそう遠くへも行けないだろう。
 
 
ザンザスは傷の痛みも忘れ、走り出していた。
 
 
 
 
 
 
綱吉は道をトボトボ歩く。
 
きっと自分はザンザスに嫌われてしまったのだ。
そうしたらもうあそこにはいられない。
10代目ってやつにもなれない。
ザンザスがいたから、役に立ちたいと思ったから、イタリアへ来たのに……。
 
 
 
「ねぇボク、何してるの?」
 
「ふ?」
 
気づけば、黒いスーツの男が綱吉の前に立っていた。
 
「迷子?ゲームとか好きかな?」
 
「…………」
 
こんな世界に関わっているため、わずか3歳ながらも最低限の事は教わった。
それが、勝手に外へ出ないこと・知らない人についていかないこと・連れていかれそうになったら大声で助けを呼ぶこと、だった。
その内1つはもう破ってしまっているが。
 
 
「……つ、つっくんいそいでるの」
 
なんとかそう言って通り過ぎようと頑張った綱吉だが、もう1人同じような男が出てきた。
 
「ほら、おまえが怪しいからじゃねーか。穏便に済まそうと思ったのによ」
 
「まだ3歳だぜ?普通ゲームとかで釣れんだろ」
 
「はぁ……しょーがねぇ、強引にいくか」
 
その瞬間、綱吉は乱暴に抱き上げられた。
 
「っっ……」
 
あまりの恐怖に声が出ない。
でも出さなきゃ。
教わったこと、ちゃんとやらなきゃ。
 
 
「っったすけて――っ!!おか―さ――ん!!ざ……ざんざす――――っ!!!!」
 
 
「はがぁ!!」
 
「ぶへっ!!」
 
叫んだかと思ったら、頭上で変な呻き声が聞こえた。
それから身体が宙に浮く。
手を離されたのだ。
 
落ちる!そう思ったが、衝撃はなかった。
 
 
 
「無事か?!綱吉!!」
 
お腹には大きな手。
見上げれば、助けを呼んだ人物が本当に立っていた。
 
 
「ざ、ざんざすぅ〜〜……」
 
堪えきれない涙が次々と溢れてくる。
今更ながら、恐怖で震え上がった。
 
「こ、こわかったよぉぉ〜っ」
 
「あぁ。遅くなって悪かったな」
 
よしよしとザンザスが頭を撫でてくれる。
それだけですごく安心出来た。
ぬくもりがあたたかい。
 
 
ザンザスは綱吉が安心しているその隙に、先程の2人を足技だけで再起不能にまでおいやる。
そして何事もなかったかのように綱吉を連れてその場から立ち去るのだった。
 
もちろん、すぐに連絡を入れて部下をそこへ向かわせる。
首謀者を特定するためだ。
 
 
 
 

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