1周年アンケート小説置き場
□すれ違い
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しくじった
そう思った時には、もう遅かった。
弾丸が右肩をかすめ、脇腹に直撃した。
「ボス!」
スクアーロが敵を斬りつける。
レヴィはザンザスの元に駆け寄った。
「ボス、弾が…」
「問題ない………っっ!!」
「ボス?!」
敵は倒せたものの、珍しくザンザスが怪我を負ってしまった。
しかも結構深い。
ヴァリアー邸へ戻ると、しばらくは安静だと言われザンザスはベッドに横になった。
大した事はない……と言いたいが、実際至近距離から撃たれた弾は脇腹を貫通していたし、右肩もかすったからといって擦り傷程度という訳ではない。
部下達も、ボスの重傷ぶりに驚いていた。
「でも、まさかボスがね…」
今日の見舞いはベルとマーモン。
ザンザスは文句でもあるかと言わんばかりにギロッと睨んだ。
「あれ、もしかして綱吉の事とか考えてた?」
「カスが。仕事中は余計な考えは捨てる」
そう言うが、実は3日後の綱吉との約束を楽しみにしていて雑念が入ったのは事実だ。
ベルとマーモンは「ふ〜ん…」と何か言いたげだったが、あえて何も言わなかった。
「それよりボス、綱吉には言ったの?」
「何をだ?」
「今のこの状況」
「……言ってねぇ」
言ったら心配するだろう。
ザンザスは2人にも「絶対に言うなよ。他のカス共にもそう伝えとけ」と念を押す。
そう、彼の悲しい顔は見たくない、させたくない。
といっても、綱吉はまだ3歳。
歩くのや喋るのが上手くなってきたあたりの歳だ。
こんな姿の自分を見たら、きっと泣いてしまうだろう。
これはもう完治するまでは距離を置くしかない。
会えないのは寂しいが、不安にさせたくない。
ザンザスは3日後に会う約束をしていたがしょうがないと思い、怪我の事はくれぐれも言わないように言ってから部下に断りの言づてを頼むのだった。
3日後。
「ツッ君〜?」
「なに?」
綱吉はおもちゃで遊ぶのをやめて振り返る。
「さっきスクアーロ君が来て聞いたんだけど、今日ザンザス君来られないらしいのよ」
「え?!だってやくそく…」
「どうしちゃったのかしらね…理由を教えてくれないし…。急なお仕事かしら?」
綱吉はおもちゃを放り出して母の所まで走ってきた。
「ざんざす、つっくんとあそんでくれないの?なんで?」
「さぁ…母さんにもわからないわ。でも、しばらく会えないみたいなのよ」
「しばらく………」
そう繰り返すと、綱吉はだんだん涙目になって、ついには泣き出してしまった。
奈々も事情がよくわからないだけに困ってしまう。
「ざん…ざすっ……ぅう……つっくんのこと…ひっく……きらいになっちゃったんだぁ〜〜っ!!」
今の綱吉には、母の「そんな事ないわよ、何か事情があるのよきっと」という言葉も届いてはいないのだった。