1周年アンケート小説置き場

□幸せ
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そして久しぶりに重なった2人の休日。
親子は8ヶ月になるリアの子供部屋にいた。
 
 
「リアー、今日はパパもずっと一緒だからね〜」
 
するとリアがキャッキャッと喜ぶ。
ザンザスはほとんど我が子と触れ合う時間が取れなかった為、少し緊張していた。
 
「ほら、ザンザスも名前呼んであげなきゃ!」
 
「あ、あぁ…」
 
リアを渡され、恐る恐る抱っこする。
思ったより重く、やわらかく、温かかった。
 
「ずいぶん重くなったな…」
 
「でしょ?リアったらすっごい食べるんだよ。よく動くし」
 
聞くと、ハイハイも物凄く速いという。
前に抱っこしたのはまだ転がる事しか出来なかった時だ。
 
 
「リア、パパにハイハイ見せてあげよっか」
 
 
ザンザスはリアをそっと降ろす。
するとリアは本当に物凄い速さでハイハイをし出した。
 
「………速いな…」
 
ハイハイなんてあまり見た事もないので比べようがないが、思ったより数倍速かった。
 
リアは2人の間を通り過ぎ、あるおもちゃの棚の前で止まる。
綱吉は不思議に思い、事の経過を見守った。
 
するとリアが片手を棚に置いた。
そして……
 
「ん〜〜〜〜っ」
 
可愛らしいかけ声と共に、もう片方の手も棚に置いた。
 
つまり……
 
 
「リアが……立った…」
 
「…………」
 
綱吉は唖然として呟き、ザンザスは目を丸くして無言になった。
 
さらにリアはパッと棚から手を離すが、すぐにコテンと床に尻もちをつく。
それから両親の方へ向き、達成感からかニッコリと笑った。
 
「っっリア〜〜〜っ!!」
 
たまらず綱吉はリアを抱きしめる。
 
「どうしたのリア!私の前じゃ立とうともしなかったのに!ママビックリしちゃったよ〜っ」
 
リアは母親の腕の中で得意気な顔をする。
 
そんな中、ザンザスだけが取り残されていた。
 
「綱吉……今、リア…立って…」
 
「ザンザスも褒めてあげてよ!ホント、練習すら私の前ではしてなかったんだよ!」
 
そう言って綱吉はザンザスにリアを渡す。
また腕に抱き、そっと頭を撫でる。
リアは深紅の目を細めて笑った。
 
「……俺達を驚かせたかったのか?」
 
「ん!」
 
「っっ……」
 
愛しい。
こんな感情を持ったのは2人目だ。
1人目はもちろん、最愛の妻。
 
 
 
どうやらリアは疲れたらしく、大きな欠伸をして目を擦った。
 
「リア、ちょっと疲れちゃったかな」
 
綱吉はリアをベッドへ戻すと、布団をかける。
そして眉間を撫でた。
こうすると子供はすぐ寝てしまうのだそうな。
子育ての先輩から聞いた裏技だ。
 
リアが眠ると、今度は夫の為に紅茶を用意する。
 
 
「いやぁ〜…今日は記念日だね〜」
 
「あぁ」
 
ぶっきらぼうに紅茶を飲むザンザス。
だが、全身から嬉しさがにじみ出ている。
 
綱吉はクスクス笑い、砂糖を2つ入れてスプーンでかき混ぜた。
 
「リアってば、外見だけじゃなくて性格までザンザスに似てるんだね」
 
「あ?そうか?」
 
「だって、私達をビックリさせたくて今日いきなり見せてくれたんでしょ?練習してるトコ見られたくなかったんだよ」
 
「…………」
 
「心配だな〜。誰かさんみたく意地っ張りで強情でプライド高くならなきゃいいけど…」
 
「おい、それは俺の事か?」
 
「自覚あるんだ?」
 
「ねぇよ」
 
一瞬見つめ合い、次の瞬間同時に吹き出す。
それからリアが寝ている事を思い出し、慌てて口を押さえた。
 
 
ベッドを覗くと、スヤスヤと眠る愛しい我が子が幸せそうに笑っていた。
 
 
「ザンザス、リアがお嫁に行っちゃう時すごく反対しそう」
 
「門外顧問のようにか?」
 
「アハハ…」
 
そう、綱吉の父、家光はそりゃあもう物凄く2人の結婚に反対だった。
最後まで認めようとしなかったし、9代目に頼んでザンザスに遠征の任務ばかり回していた。
だがリアが産まれると、やはり孫は可愛いのか、デレデレなただのおじさんになった。
 
 
「相手によるが、リアが決めたんなら仕方ないだろ」
 
「寂しくない?」
 
「おまえは、最後まで俺の傍にいるんだろ?綱吉。だったら寂しくない」
 
「っ……これだからイタリア人は…」
 
不意打ちだ、と綱吉は顔を赤くして紅茶をちびちび飲む。
 
幸せだなぁ……強くそう感じた。
 
 
 
 
 
 

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