小話置き場

□父の決意
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先月4歳の誕生日を迎えたばかりの綱吉は、廊下で父親を見つけて飛びついた。
 
 
「お父さんっ」
 
「おっ、ツナじゃないか。どうした?迷子か?」
 
仕事中にも関わらず、家光は愛息子を抱き上げる。
通行人も今更そんなことを気にしはしない。
日時風景なのだ。
 
ちなみにここは、イタリアのボンゴレ本部からそれほど遠くはない小さなアジトである。
 
 
「ツッ君、もう4歳なんだから迷子になんてならないよっ」
 
「そうかそうか〜」
 
可愛い妻に似て可愛い息子。
 
2年前、家光は妻と息子を連れてイタリアへやってきた。
それもこれも、これ以上家族と離れたくないためだ。
もちろん危険があるが、それは日本にいても同じ事。
ならば近くに置いて守れる方が良い。
 
だが仕事が忙しく、こんな時しか息子に会えない。
まだ幼い彼は、自分が帰る時間にはもう寝てしまっているのだ。
 
 
 
綱吉は大きな目をキラキラ輝かせながら、父親の腕の中で嬉しそうに言った。
 
「ツッ君ね、ザンザスとチューしたの!」
 
 
「…………………………………………………………………………………………………は?」
 
 
固まった家光の顔の前で、綱吉が小さい手を振る。
 
「お父さん?」
 
「っ………」
 
やっと我に返った家光は、綱吉をぎゅ〜っと抱きしめた。
 
「ザンザス…あいつめ!よくもツナにそんな事を!!…ツナッ!あの男…ザンザスだけはやめなさい!」
 
「ザンザス、いい人だよ?」
 
「あいつは極悪人だ!」
 
「違うもんっ、ザンザス優しいもん!」
 
そんなやり取りをしばらく続け、家光はとうとう折れた。
 
「……わかった、ツナ。じゃあ父ちゃんにもチューしてくれないか?」
 
「ん〜……やだ」
 
「ザッ…ザンザスとは良くて父ちゃんとは嫌なのか!?」
 
「だっておひげ痛いんだもん」
 
「ツナァ〜………」
 
 
 
「ハッ、残念だったな家光」
 
「なっ……」
 
「あ、ザンザス!」
 
綱吉はパアァと笑顔になる。
そして家光の腕から無理矢理降り、1回床にしりもちをつくと、ザンザスに飛びついた。
 
「ザンザス!」
 
「綱吉」
 
ザンザスは優しく綱吉を抱き上げる。
そしてチュッと、家光の目の前でキスをした。
いくらイタリアでも、挨拶で口にはしない。
 
「ザンザス!ウチの息子は渡さんぞ!」
 
「奈々には許可を貰った。問題ない」
 
「何!?」
 
「綱吉、昼寝の時間だろ?行くぞ」
 
「うんっ」
 
呆然とする家光を置き、2人は仲良く行ってしまった。
 
 
 
 
「ザンザス、一緒にお昼寝?」
 
「あぁ」
 
綱吉を抱き上げたまま、ザンザスは微笑む。
彼がこんなに優しく笑うのはおそらく、綱吉の前でだけだろう。
 
 
「やったぁ!」
 
綱吉は満面の笑みを浮かべ、ザンザスに抱きつく。
そしてそのまま、大好きなファーストキスの相手の胸で眠ってしまうのだった。
 
 
 
 
 
「奈々っ、ザンザスを綱吉に近づけるなとあれほど言ったじゃないかっ」
 
「あらぁ〜、ザンザス君いい子よ?ツッ君もお兄さんが出来たみたいで喜んでるし」
 
「〜〜っツナは渡さんぞ!ザンザスー!!」
 
誰にともなく宣言する家光なのであった。
 
 
 
 
 
 
 
 
〜後書き〜
かなり久しぶりです。
子供、馬鹿に出来ませんね。
1歳ちょっとで歩けるようになるんですよ。
これでも、綱吉は発育が遅い設定なのですが……4歳は意外と大きいです!(by現役保育士←私ではないですよ)
ザンザスは14歳くらいな設定で。
年齢の差は変わりません。
2010.01.27
 
 

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