小話置き場

□反抗期?
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※綱吉10歳です。
 
 
 
いつもは滅多に走らないザンザスが、今日はヴァリアー邸からボンゴレ本部を走り回っていた。
 
 
「綱吉?!何処だ?!」
 
捜しているのはもちろん、沢田綱吉。
 
久しぶりに長期任務から帰ってきたのに、彼がいなければ意味がない。
どんなに面倒な仕事でもこなせるのは、帰った時に見られるあの笑顔のためなのだ。
 
 
 
 
「ム?どうしたんだい?ボス」
 
マーモンがふよふよとやってきた。
それが運の尽き、思いきりガシッと掴まれ、問答無用で拉致されたのだった。
 
 
 
 
 
「綱吉の居場所?」
 
やはり、と思う。
自らのボスは、綱吉の事となると人が変わるのだ。
 
 
 
8年前、綱吉が両親に連れられてイタリアへ来た当初は、ザンザスはそりゃあ怒りまくった。
ボンゴレ10代目になるのは自分だと思っていたからだ。
 
だが綱吉が、睨みまくっていたザンザスに向けてニパッと笑った。
その瞬間、周囲どころかあのザンザスまでもが堕ちた。
 
それからというものの、ザンザスは綱吉が10代目になった時に少しでも楽でいられるようにと仕事に励み、また、少し丸くなった。
それでも、優しいのは綱吉限定だが。
 
 
 
 
「はぁ……じゃあ行くよ」
 
ずびーっと相変わらず綺麗ではない探索方法をするマーモン。
もちろん、怖くて報酬なんかねだれない。
 
 
「ムム…まだ学校だよ」
 
マフィアの子供が通う小学校、綱吉はそこへ通っていた。
 
「まだいんのか?いつもより遅くねぇか」
 
「まぁ、友達と話したり遊んだりしたい年頃だしね」
 
ザンザスが迎えに行こうかどうしようか迷っていると、綱吉が帰って来た。
 
 
「ただいまー」
 
「おかえり、綱吉」
 
マーモンがふよふよと近寄り、綱吉の頭を撫でる。
実は彼も、これが楽しみで厳しい仕事にも耐えられているのだ。
 
たまにザンザスがいない時は、抱きしめてもらったりもしている。
 
 
「あれ?ザンザス帰ってたんだ?」
 
「あぁ。……綱吉、ちょっと遅くねぇか?もう外も暗ぇだろ」
 
「べ、別に平気だよっ」
 
「今度遅かったら俺が迎えに行くからな」
 
その瞬間、綱吉が物凄い勢いで叫んだ。
 
「ダメダメ!絶ーっ対ダメ!!迎えになんて来ちゃダメ!」
 
「おい、何でそんなに嫌がる」
 
「ダメなもんはダメなの!もし来たらザンザスとは絶交だからねっ!」
 
「っ…………………」
 
この世の終わりのような顔のザンザスを置き去り、綱吉は自室へと向かうのだった。
 
 
 
 
 
 
 
「はぁぁ〜………」
 
綱吉は自室でため息をつく。
 
ちょっと言い過ぎたかなと思う。
でも、嫌なものは嫌なのだ。
 
 
綱吉の友達は良い子が多い。
マフィア系の学校に通っているとはいえ、しょせんは子供、普通の子達と何ら変わらない。
身内の話などもしてしまう。
だから大人も、子供達が一定の年齢に達するまでは必要以上にファミリーの事は教えないのだ。
 
綱吉はいつも喜々として、優しい母の事、そして大好きなザンザスの事を話していた。
友達もそれを聞いているため、実際にザンザスに会ったらきっと今まで言った事を暴露されてしまうだろう。
それこそ意地悪ではなく、純粋に。
 
それがたまらなく恥ずかしいのだ。
 
綱吉も以前とは違い、あまりザンザスにベタベタしなくなった。
ザンザスにしてみればショックな事この上ないのだが。
 
やはりザンザスの事は大好きだが、綱吉もいろいろ考えるようになったのだ。
仕事の邪魔にならないようにしようとか、もう少し大人になろうとか。
その分、学校で思いきり彼の事を話してしまう。
 
 
「とにかく、友達とザンザスを会わせるのだけは絶対に阻止しなきゃ!」
 
そのためにはあのくらい言ってちょうど良かっただろう。
そう結論づけた綱吉だった。
 
 
 
 
 
 
 
次の日。
 
綱吉は放課後になり重大な事を思い出した。
今日は委員会の集まりがあったのだ。
 
生物委員会に入っている綱吉。
いつもは前日に必ず母に知らせるのだが、昨日はいろいろあったため忘れていた。
 
そうこう考えている間に委員会が始まってしまった。
 
 
生物委員会とはある意味1番面倒臭い委員会だ。
植物の手入れ、飼育しているウサギの世話。
 
特に今日は、植物の植え替えとウサギ小屋の掃除で忙しかった。
それでも仲の良い友達が一緒だから楽しいのだが。
 
 
 
やっと終わった頃には辺りは暗く、綱吉は友達と校門へ急いだ。
 
 
「………ん?誰かいねぇか?」
 
友達の1人が校門を指して言う。
綱吉もそちらに目をこらした。
 
「ほらあそこ、暗くて黒いからよくわかんねぇけど…」
 
“黒い”という単語にビクッとする。
 
だがそんなはずは………
 
 
「綱吉!」
 
 
「っ……ザンザス…?」
 
 
やはり、黒いものの正体は彼だった。
昨日あれだけ言ったのに…。
 
「いくら何でも遅いぞ!ちなみに今日は奈々に言われて来たんだからな」
 
だから絶交はなしだと主張される。
まぁ暗い中1人で帰るのは少し怖かったからホッとしたのだが、別の問題が発生した。
 
 
「なぁツナっ、この人が噂の“ザンザス”か?」
 
「あ?」
 
ザンザスは指を指されて睨むが、相手もマフィアの息子、恐面は見慣れている。
綱吉が止める間もなく、友達は次々に喋り出した。
 
「俺、ツナの友達!アンタの事、散々ツナから聞いてるよっ」
 
「綱吉から?」
 
「カッコイイとか、すっげー優しいとか」
 
「小さい頃よく遊んでくれたとかな!」
 
「強いし偉いし、まさに憧れで大好きだってなーっ」
 
一気に言われ、ザンザスは少し呆然となってしまった。
 
そして綱吉はというと、真っ赤になって友達にしがみついている。
 
 
「……………」
 
ザンザスはやっと理解した。
綱吉はこれを怖れていたのだと。
 
 
 
「綱吉、帰るぞ」
 
「…………うん」
 
意外に普通なザンザスの様子に意表を突かれながらも、綱吉は友達に別れを告げて車に乗り込むのだった。
 
 
「…………………」
 
「…………………」
 
無言。
それが逆に怖かった。
 
もしかして昨日の絶交発言に怒ったのだろうか…。
 
 
 
 
そしてヴァリアー邸の車庫に入る。
 
車を降りてザンザスが鍵をかけた途端、抱きしめられた。
 
「……え…?」
 
綱吉は一瞬固まってしまう。
怒っていたのではなかったのだろうか。
 
 
「ザンザス…?」
 
「……約束破って悪かったな」
 
「だって、母さんに頼まれたんでしょ?」
 
「いや……奈々が心配していたのは本当だが、俺が名乗り出たんだ」
 
「そっか……でも嬉しかったよ」
 
背中に手を回しても、大きすぎて後ろまで届かない。
それでも久々の彼の感触が心地良い。
 
 
「それにいい事も聞けたしな」
 
「あっ…あれは忘れてよ!最近はそんなに言ってないよ?!」
 
そういえば聞かれてしまったのだと思い出す。
慌てて弁解するが、あまり意味はないだろう。
 
「嬉しかったぞ、綱吉」
 
「……だから迎えに来ないでほしかったのに…」
 
「絶交はなしだぞ?」
 
「それは……うん、ごめん、ちょっと言い過ぎた」
 
すると、抱きしめられている腕の力が強くなるのを感じた。
 
強いながらもすごく優しくて、やっぱり大好きだなぁと思った。
 
 
 
 
 
ヴァリアー邸に入ると、ルッスーリアが迎えてくれた。
 
「お帰りなさい、ツナちゃん、ボス!」
 
「ただいまルッス!」
 
「………………」
 
ルッスーリアは2人を見てピンと察知した。
 
「仲直りしたのね、2人共っ」
 
「うん!」
 
「ツナちゃんの最初の反抗期ってところだったのかしら?」
 
反抗期?と綱吉が首を傾げる。
聞いた事のない言葉だった。
 
その横でザンザスはルッスーリアを睨みつける。
 
「カスが。綱吉はただ照れてただけだ」
 
「なっ……」
 
間違いではないのだが、そんなにハッキリ言われても困る。
 
 
「っザンザスなんて……バカ―――っ!!」
 
綱吉はそう叫ぶと、走って行ってしまった。
 
 
「つっ綱吉……っ!」
 
残されたのは、暗殺部隊ボスとは思えぬ哀れな男と、それを見守るオカマ。
 
 
「次の反抗期は大変ね」
 
「次?」
 
「あと4〜5年たってお年頃になったら、きっとまたくるわよ」
 
「………………」
 
 
もう勘弁してくれ……とうなだれるザンザスだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
〜後書き〜
微妙なお年頃の綱吉。
反抗期というか…これは違うような…?
次の反抗期では、風呂とか一緒に入ってくれなくなりそう(笑)
一緒に寝なかったり。
でも好き合ってればいいと思います。
2008.01.09
 
 
 
 

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