小話置き場

□特別だから
1ページ/1ページ


 
 
「スクアーロさんっ」
 
「お"…お"ぉ"……」
 
呼ばれたスクアーロはぎこちない動作で振り返る。
 
「1ヶ月ぶりですね」
 
「そぉだなぁ」
 
「お仕事お疲れ様でした」
 
「あ"ぁ"」
 
この笑顔が見れるのなら、この笑顔のためならば、どんな仕事も耐えられる。
 
 
 
「ところで……私の名前、覚えてくれました?」
 
「………………覚えてはいる」
 
そう、名前ならとっくに頭に入っている。
 
ただ、呼べないのだ。
 
 
「言ってみて下さい」
 
「……笹川…京子…」
 
「はい。じゃあ、もう名字で呼ばないで下さいよ?」
 
「………そりゃあ無理だろぉ」
 
今までスクアーロは京子を「笹川」と呼んでいた。
だがある時、「それじゃお兄ちゃんか私かわからないから名前で呼んで下さい」と言われたのだ。
 
たかが名前、されど名前。
いきなり呼び方を変えろというのは意外と難しい。
 
 
「私の事は名前で呼べないんですか?」
 
いつもは太陽のように笑うその顔を不安そうにさせてそう言われる。
 
呼べないのは、特別だから。
呼びたいけれど、今更気恥ずかしいのだ。
 
 
 
「あ"〜……笹川京子…」
 
「名字はいらないです」
 
「う"お"ぉ"ぉ"い!!無茶言うなぁ!!」
 
それでも、京子は譲らなかった。
 
だってやっぱり、彼の特別だっていう実感がほしいから。
 
 
「ね、スクアーロ」
 
「っ!!」
 
逆に呼び捨てで呼ばれた。
ファーストネームではないが、やはり違う。
 
主に心臓への負担が。
 
 
 
「…………きょ……京子…」
 
「っはい!!」
 
京子は笑顔で応えるが、当の呼んだ本人は片手で顔を押さえて下を向いていた。
髪がサラサラと流れ、普段は隠れている事が多い耳が垣間見える。
 
その耳は、笑ってしまうくらい真っ赤だった。
 
きっと怒るだろうから言わないけれど。
 
 
 
「……あ"〜…ありえねぇ…」
 
「ありがとうございます、スクアーロ…さん?」
 
「さんはいらねぇ。あと敬語もだぁ」
 
「え…でも……」
 
「俺もテメェを名前で呼んだんだ、それくらいなんてことねーだろぉ」
 
「はいっ!!」
 
そうだ、恋人同士なのだから敬語などいらない。
どうやらすぐには無理そうだが。
 
 
くつくつと笑うと、京子は慌てて「うんっ!!」と言い直した。
 
 
 
 
 
マイペースで、マイペースでいこう。
 
年の差なんて関係ない。
 
 
だって、お互いが同じくらい相手に惚れてしまっているんだから…………。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
――――――――――――――――
スクアーロ×京子です。
これまた別館で扱っているカプ。
マイナーですね〜…とても。
歳はスクアーロがずっと上だけど、京子ちゃんがいろいろ強いといい(笑)
つまり、どこへいっても誰と絡ませても、スクアーロはヘタレなんです。
調子に乗ってマイナーばかりです、最近。
2008.04.07
 
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ