小話置き場

□結局は
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「初恋は?」
 
突然、綱吉がそんな事を言ってきた。
 
 
 
いつものようにヴァリアー邸に遊びに来ていた綱吉だが、ザンザスは事務処理に追われていた。
なのでする事もなく彼の仕事振りを眺めるだけ。
 
それすらも飽きてきた頃、やっと一区切りついたのかザンザスが席を立った。
 
 
「終わった?」
 
「いや、あと少しだ」
 
「じゃあお茶入れてくるね」
 
「コーヒー」
 
「わかってるって。言葉のあやだよ」
 
どんなあやだ、とつっこむ前に綱吉は部屋を出て行っていた。
 
 
 
 
「ふぅ〜」
 
綱吉はコーヒーが一滴ずつ落ちていくのを眺めながらため息をつく。
やっぱりマフィアでも書類仕事は沢山ある。
意地でもなりたくないが、きっと無理だろう。
だって、こっちの世界には彼がいるから。
 
 
 
「あら?ツナちゃん」
 
「ルッスーリア?」
 
ひょこっと顔を出したのはルッスーリアだった。
 
「あ、ボスのコーヒー?」
 
「うん。仕事大変みたい」
 
「まぁっ、恋人を放って仕事?!信じらんないわ!!」
 
大袈裟にそう言うと、綱吉の為に棚からお菓子を出してくれた。
 
 
「そういえば、ルッスーリアは出かけてたの?」
 
「えぇ、愛人のと・こ・ろ・に」
 
「えぇ?!」
 
一瞬驚くが、おかしな事ではない。
マフィアならば愛人が何人いようとむしろそれが普通である。
 
「あの……ザンザスには…」
 
愛人とかはいるの?と聞きそうになり、聞けなかった。
聞くのが怖い。
もし昔にいたとしても、やっぱり嫌だ。
 
それを察したのか、ルッスーリアは去り際に優しく言い残した。
 
「大丈夫よ、ボスに聞いてみなさい」
 
そして綱吉は戻るなり「初恋は?」と聞いてしまったのである。
「愛人は?」とは聞きづらかったのだ。
 
 
「…………何だ突然」
 
相当驚いたのか、ザンザスの反応が遅かった。
 
「だから、初恋。誰?」
 
「おまえ」
 
「…………………まさかぁ」
 
今度は綱吉の反応が遅れる。
だってザンザスは20歳過ぎた大人で、マフィアで、強くてかっこよくて……。
 
質問が悪かったのかもしれない。
思いきって本題に入ってみた。
 
 
「じゃあ…愛人は?」
 
「いねぇ」
 
「今まで…」
 
「いねぇ」
 
二度続けての即答。
だがありえない。
 
「嘘言わないでよ。俺別に怒んないからさ」
 
「嘘も何も……おまえ忘れてないか?」
 
「何を?」
 
ザンザスはハァ〜と盛大にため息をつくと、「いいか」と話し始めた。
 
「俺がジジイに凍らされたのが8年前。その時は16でただただ力を得る事だけに時間を費やしていた。それから8年後、氷が溶かされてからはすぐにリング争奪戦だ。…愛人なんて作る暇がどこにある」
 
「…………」
 
言われてみればそうである。
 
だがそうなると……
 
「童貞だったの…?」
 
「…………………」
 
それには無言の返答。
まぁ、それは仕方がないだろう。
怒るつもりもない。
 
 
「で?テメェはどうなんだ?」
 
「何が?」
 
「初恋だ」
 
「………」
 
ザンザスがああ言った手前、自分もザンザスだと答えたいが、生憎違うのだ。
 
 
「俺は……マリちゃん」
 
「マリ?」
 
「幼稚園で同じクラスだった子」
 
「幼稚園………」
 
ザンザスは繰り返した。
 
「可愛かったんだよ?」
 
「てか幼稚園ってそりゃ…」
 
カウントされるのだろうか。
 
「でもね、そのマリちゃんも京子ちゃんもそうだけど、今思うとあれは別に恋なんかじゃなかったんじゃないかなって思うんだ」
 
「それは……」
 
ザンザスが何か言おうとしたのを止めて、綱吉は話し続けた。
 
「今まで好きになった子ってすごく可愛かったし癒されたけど、特にその子とどうなりたいって訳じゃなかったんだ。ただ少しでも話が出来ればいいなぁとかそんな程度」
 
「それで?」
 
「でも、ザンザスに愛人がいるかも…過去にいたかもって思うだけで、俺すっごい嫉妬しちゃったんだ」
 
「……………」
 
綱吉は照れたように笑って言った。
 
「俺も、本当の初恋相手はザンザスかもしれない」
 
その瞬間、思いきり抱きしめられた。
 
「気付くのが遅ぇーんだよ、カスが」
 
ぶっきらぼうに聞こえるが、一緒にいればわかる。
その中にいろいろな感情がある事を。
綱吉は、こんなに嬉しそうな恋人を久しぶりに見た気がした。
 
 
「……な、なんだか告白大会みたいになっちゃったね…」
 
コーヒーも冷めてしまった。
だが、きっとブラックコーヒーは苦すぎるだろう。
 
今の2人は最高に甘い空気に包まれているのだから………
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
〜後書き〜
何だこりゃあ。
姉が「ザンザスって8年間凍ってたから、愛人とかもいなかったんじゃん?」と言った事から始まった今回のこの話。
確かに…と思いましたよ。
てか最後……訳わからん。
少女漫画でもこんな終わりはないぞ(汗)
なんかいろいろとすみません。
2008.06.17
2008.06.19

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