小話置き場

□父の日
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父の日。
 
それは普段頑張っている父親に感謝の意を伝える日である…… 
 
 
 

「はい、父さん」
 
綱吉はそう言って大きめの包みを父、家光に差し出した。
 
「え…」
 
家光は呆気に取られる。
それを見て綱吉は「父の日だよ父の日っ」と軽くぶっきらぼうに言った。
 
いや、わかっている。
今日が父の日だという事はわかっている。
ただ、まさか最近冷たい愛する息子から貰えるとは思っていなかったのだ。
 
段々状況が飲み込めてきて涙目になる家光。
 
「ツ"〜ナ"ぁ〜〜っ」
 
そう叫ぶと、ここがボンゴレ本部の廊下のど真ん中だという事も忘れて息子に飛びついた。
普段なら全力で避ける綱吉だが、今日くらいは好きにさせてやる事にした。
 
「まぁ…父さんには感謝してるよ」
 
「ツナっ…!!」
 
「ずっと家にいなかったり、嘘の職業を教えたり、マフィアのボスなんてものを自分の息子に押し付ける父親だけど」
 
グサァっと綱吉の尖った台詞が突き刺した。
確かに、あまり父親らしい事をしてやった覚えはあまりない。
だが、誰より息子を愛しているつもりだ。
 
「でも……やっぱり感謝してるよ」
 
照れ臭そうに言う息子を、さらに強く強く抱きしめる。
果たしてこんなに素直な彼は何年振りだろうか。
 
だが、次の一言で家光の感動もすっかり冷めてしまった。
 
 
「だって……ザンザスと出会えたのもマフィアに関わったからだし…」
 
 
ピシッと、今度は息子を抱きしめたまま固まった。
 
確かに、確かにマフィアに引き入れたのは自分だ。
だが、だが……
 
「ツナっ!!父さんはあんな奴と付き合わせるためにおまえをこちらに連れて来た訳じゃないぞ?!」
 
またまたぎゅ〜っと息子を抱きしめる。
綱吉はもはや力を抜いてされるがままだった。
 
「でもやっぱり父さんがマフィア…ボンゴレ関係にあったからだよ」
 
だからその点では感謝してる、と綱吉は苦笑した。
 
実は家光は、綱吉とザンザスのお付き合いに反対なのだ。
ザンザスといえば冷酷残忍で我が儘で暴力的、目つきも悪く見た目と同じで腹の中も真っ黒、そんな印象しかない。
そんな奴に大事な息子はやれない。
だがザンザスが綱吉と会ってから少し丸くなったのも確か。
それでも決していい奴とは言えない。
 
 
 
そこへタイミング悪く、ザンザスが来た。
 
「…………………」
 
父親にきつく熱く抱きしめられている綱吉を見て、はらわたが煮え繰り返らない訳がない。
声をかけるより早く2人を引きはがし、綱吉を自分に引き寄せた。
 
「なっ…貴様いつの間に!!」
 
「ザ、ザンザス…?」
 
「人のモンに手ぇ出してんじゃねーよ」
 
そしてなんと、家光の目の前でキスをしたのだ。
これにはさすがに、された綱吉も息子のキスシーンを見た家光も驚いた。
 
「っ……なっ…ザン、ザスっ、父さんの前で…っ」
 
「いいだろ別に。毎日してんだし」
 
「毎日だと?!」
 
家光がまさにザンザスに飛びかかろうとしたまさにその時、彼の身体が後ろに引っ張られた。
 
 
「親方様、こんな所で油を売って……さ、仕事に戻って下さい」
 
そんなため息混じりの台詞と共に、家光の部下ターメリックが立っていた。
 
「離せっ!!私の可愛い息子を奪おうとしているこの悪魔に制裁を下さなければ!!」
 
「はいはい、もう奪われてるでしょうが」
 
確かに、と綱吉が納得する中、家光は部下に引きずられて去って行った。
 
 
 
「「……………」」
 
残された2人はしばし呆気に取られていたが、すぐに綱吉はザンザスに向かってむくれた。
 
「もうっ、ザンザスがあんな事するからだよ?!」
 
「テメェが他の奴に抱きしめられてんのが悪ぃ」
 
「あれが父さんの愛情表現なのっ」
 
「愛情は俺からだけで十分だろ」
 
「っっ〜…そう…だけど……」
 
こんな所がやっぱりイタリア人だなと思う。
 
 
「……まぁいっか、プレゼントも渡せたし」
 
「プレゼント?」
 
若干不機嫌にザンザスが尋ねる。
 
「あれ?ザンザス知らないの?今日は父の日なんだよ」
 
「父の日……」
 
「ん?イタリアにはないのかなぁ…」
 
文化の違いにはまだ驚く事がたまにある。
 
「…イタリアではどうか知らんが、聞いた事はない」
 
「そっかぁ」
 
そこで綱吉はパッとひらめき、にっこり笑った。
 
ザンザスは直感した。
この顔になった彼はろくな事を口にしない、と。
 
その予感というか直感は、さすがというかなんというか、見事に当たった。
 
 
「そうだ、この機会にザンザスも9代目に何かあげたら?」
 
やはり。
 
「ふざけんな。誰があんな老いぼれなんかに…」
 
「そんな大層な物じゃなくていいんだよ、気持ちがこもっていれば。ただ「今までありがとう」とか言って渡せばきっと喜ぶよ?」
 
それをする自分を想像し、思わず青ざめるザンザス。
冗談じゃない。
 
そんな彼の様子を面白そうに眺め、綱吉は周りに誰もいない事を確認すると、チュッと軽くキスをした。
 
「っ……綱…吉……?」
 
不意をつかれ、目を丸くするザンザス。
綱吉は笑顔で言った。
 
「俺は9代目に感謝してるよ。だって、ザンザスを迎えてくれたんだもん。悔しいけど、父さんと9代目がいなければ今俺達はこうして出会ってない。……でしょ?」
 
「…まぁ……な」
 
だが今更綱吉みたいには出来ない。
 
「そうだっ、一緒に何かあげようよ!!」
 
「………それならまだ…」
 
「決まり!!ほら早く、計画立てよ!!」
 
「……あぁ」
 
嬉しそうな綱吉を見て、しょうがないかと苦笑するザンザスだった。
 
 
この日、プレゼントを開けた家光と9代目が泣いて喜んだのは言うまでもない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
〜後書き〜
ひ…久しぶりの更新…。
10年後ではないけど、綱吉がイタリアにいる設定です。
オレガノではなくターメリックを出したのは、彼女だと家光と同じ反応をしそうだったから(笑)
イタリアに父の日があるかは調べてないのであやふやにしました。
2008.06.06

 
 

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