小話置き場

□再会は驚きと喜びと幸せで
1ページ/1ページ


 
「着いたーっ、イタリア!!」
 
綱吉は元気良く空港を飛び出す。
 
その後ろには、あからさまに不機嫌なザンザスがいた。
 
 
 
 
 
事は2日前。
 
「ザンザスのお母さんってさ、今どうしてるの?」
 
「・・・・・・さぁ。生きているとは思うがな」
 
「会ってないの?!何で?!母親でしょ?!」
 
「あんな奴会いたくもねぇ」
 
「だめ!!」
 
そう言って綱吉は立ち上がる。
そして隣に座っているザンザスの目の前に仁王立ちした。
 
「お母さんでしょ?自分を生んで育ててくれたんだよ?もっと感謝しなきゃ」
 
「・・・・・・確かに俺を生んだ奴だが、育ててもらった覚えはねぇ」
 
「ザンザスはなくても、9代目と会うまでは育ててくれてたんでしょ?」
 
「・・・・・・・・・」
 
まぁ、そうなるのだろうか。
 
「だったらちゃんと感謝しなくちゃ!!会って自分の成長を見てもらわなくっちゃ!!」
 
「別に・・・・・・」
 
「それに、俺は会いたいよ。だってザンザスを生んでくれた人だもん。お礼が言いたい」
 
「何でテメェが礼を言うんだ」
 
「ザンザスが生まれたから、俺は今こうして幸せなんだ。だから・・・」
 
「綱吉・・・」
 
「ってな訳で、イタリア行こう!!」
 
「・・・・・・・・・はぁ??!!」
 
 
 
 
 
という感じで、本当に来てしまったのである。
 
 
「いい天気だね〜」
 
「・・・・・・・・・」
 
相変わらず仏頂面のザンザス。
いつもの事だが。
 
「ザンザスのお母さんに会ったら、イタリア案内してねっ」
 
「・・・やっぱり会うのか・・・」
 
「当然!!」
 
実は綱吉、下準備も完璧であった。
9代目に電話をしてザンザスの母親の所在を聞いてみると、なんとボンゴレが用意した建物に住んでいると聞いた。
彼女に援助もしているらしい。
理由を説明すると9代目は「おお・・・やっとザンザスも親への感謝の念が生まれたのじゃな。わしの所にも来ないかのう・・・いや、むしろ綱吉君、君が来なさい!!そして可愛くじ〜じと呼んでくれたまえ!!」と喜んでいた。
 
住所も教えてもらい、後はザンザスを連れて行くだけ。
これは意外にすんなりいった。
「何でも1つだけ言う事聞くから!!」と、これだけであんなに嫌がっていた母親に会うのを了承したのだ。
やっぱり意地を張っているだけで本当は会いたいのかなぁと、自分の身の案じる事なく綱吉は1人そう考えるのだった。
 
 
 
 
 
大きな1軒屋。
家も広そうだが庭も広い。
 
「ここ・・・だよね?」
 
言われた住所を確認する。
ザンザスは知らないので何とも言えない。
ここにも初めて来た。
 
「ボンゴレが援助してるっつーんだ、これくらいは当然だろ」
 
それに妙に納得しながらも、綱吉はインターホンを押した。
するとすぐに門が開く。
 
「・・・入って・・・いいんだよね?」
 
「多分・・・な」
 
そうして2人は長い庭を歩き、家の前まで辿り着いた。
どこから見ていたのか、ドアの鍵がすぐに外され、メイドのような女性が出てきた。
そして「ご案内致します」と言うと、歩き始めた。
 
イタリア語だったが、それも綱吉はしっかり準備していた。
大体は聞き取れて話せるまでになったので、通訳はいらないだろう。
 
 
 
「こちらでございます」
 
丁寧なメイドは1つのドアの前で止まると、扉を開けた。
 
「「・・・・・・・・・」」
 
緊張が走る。
それは綱吉もザンザスも同じだった。
 
 
 
「失礼しまーす・・・」
 
入ると、ふっくらとして綺麗に着飾った中年の女性が座っていた。
 
 
「・・・・・・・・・・・・」
 
ザンザスは固まる。
 
確かに記憶とはだいぶ違うが、その顔は確かに幼い頃ずっと見つづけてきた顔だった。
 
 
 
「初めまして・・・ね、そちらの子は。そしてザンザス・・・・・・大きくなって・・・」
 
「・・・・・・」
 
ザンザスが言葉を失っていると、女性はゆっくり近づいてきて、そして思い切り抱きついてきた。
 
 
「あぁザンザス・・・・・・本当に立派に成長して・・・!!」
 
突然の事に反応しきれないザンザスはされるがままになる。
 
さらに女性は綱吉を見ると、今度は彼にガバッと抱きついた。
 
「こんなに可愛い子と一緒にくるなんて・・・!!貴方がボンゴレ10代目の綱吉君?聞いてた通り、すっごく可愛いわ〜!!」
 
「・・・・・・・・・」
 
予想外のハイテンションにただただ驚く2人。
この人だよね?という目線を送ると、そのはずなんだが・・・という顔が返ってきた。
 
 
一通り騒がれた後、落ち着いてお茶でもどうぞと言われ、やっと席についた。
 
 
 
「ごめんなさいね、つい嬉しくって・・・」
 
柔らかそうなその雰囲気は、ザンザスとは似ても似つかなかった。
 
「9代目から今日あなた達が来るって聞いた時は本当、夢のようだったわ」
 
彼女曰く、9代目とはずっと連絡を取り合っていたらしい。
そして彼はザンザスや綱吉の写真まで送りつけて、近況を随時報告していたそうだ。
 
「あんの老いぼれ・・・・・・」
 
今度会ったらかっ消す!!そう心に誓うザンザスだった。
 
 
 
「じゃ、じゃあ、俺はちょっと抜けようかな・・・」
 
親子水入らずで話したい事もあるでしょ?と言うが、ザンザスからは1人で逃げるなという目で見られ、彼の母からは「何言ってるのよ〜遠慮なんかしないでっ」と引き戻された。
 
「綱吉君はもう家族みたいなものなんでしょ?」
 
「・・・へ?」
 
「2人、付き合ってるんですって〜?頑張ってね、応援してるわ!!結婚式は陰ながらしっかり見させてもらうからっ」
 
「・・・・・・・・・俺達男同士ですけどぉ・・・」
 
「イタリアではそんなものはピザにトマトがあるかないか程の違いよ」
 
・・・・・・全くわからない。
 
 
すると、ずっと黙っていたザンザスが口を開いた。
 
「テメェはどうしてまだ9代目と連絡を取っている」
 
「ちょっとザンザス!!」
 
「っ??!!」
 
綱吉が突然怒鳴るので思わず目を見開く。
 
「お母さんの事をテメェって何?!ちゃんとお母さんって呼ばなきゃ!!」
 
「ママンでもいいわよ〜」
 
「あ、それいい!!」
 
キャッキャッとはしゃぐ2人にため息をこぼす。
何故にそんなに意気投合している・・・・・・。
 
とりあえずと、ザンザスは話を戻した。
 
「まさかあの老いぼれと夫婦だからとは言わねぇよな」
 
「ザンザスっ」
 
確かに、彼の母親はザンザスが9代目との間に生まれた子だと妄想して彼をボンゴレに託した。
今更そんな事を引っ張り出して、もし勘違いだと知ったら・・・・・・
 
だが、これまた予想外の返答が返ってきた。
 
 
「あら、9代目と私は何でもないのよ?だから貴方はクーデターなんて起こしたのよね?」
 
 
さらっと、あくまでさらっと軽〜く言った。
 
 
「「・・・・・・・・・・・・」」
 
2人は唖然とする。
 
彼女はさらに続けた。
 
「貴方に死ぬ気の炎が出た時はやったと思ったわ。だってあの時の暮らしって酷いものだったもの。覚えてる?毎日食べるのに精一杯。そこでボンゴレに代々伝わる炎でしょ?これを使わない手はないじゃない」
 
「えっと・・・じゃあザンザスのお父さんは・・・」
 
「あ、会いたい?今ちょっと出かけてるんだけど・・・この子を預ける時は隠れてもらってたわ。バレたら困るじゃない」
 
「「・・・・・・・・・・・・」」
 
「でも良かったわ、クーデターが起きたって聞いた時はどうしようかと思ったけど、今はちゃんと可愛い恋人もいて落ち着いているようだし」
 
そしてカレンダーを確認し、「あら〜今日はあの人帰りが遅いわね〜」と残念そうに言った。
 
 
「ザ・・・ザンザス・・・・・・お父さんいるって知ってた・・・?」
 
「いや・・・記憶に全くない・・・・・・」
 
すると彼の母は笑って「だってお仕事大変でほとんど家にいなかったし、貴方小さかったもの〜」と言った。
 
 
 
 
あっという間に夕方になってしまい、帰る時間になった。
 
「さみしいわ、もうお別れなんて・・・」
 
「また会えますよっ、ね、ザンザスっ」
 
「・・・・・・あぁ」
 
それを聞くと彼の母は嬉しそうに笑い、我が子の頬にそっと手を添えた。
 
「本当に・・・ごめんなさいね。でも、貴方の事を思ってだったのよ・・・」
 
それから綱吉を見て、微笑んだ。
 
「これからもこの子をよろしくね。私は何があってもあなた達の見方よ」
 
「・・・はいっ」
 
もう1人母親が増えたみたいだ・・・そう綱吉は思った。
 
 
「今まで、私からは会いに行けなかったから・・・。貴方から会いに来るまでは私からは会いに行かないと9代目と約束していたのよ・・・」
 
「・・・そうだったのか」
 
「えぇ。だから嬉しいわ。・・・きっと綱吉君がこの子を連れてきてくれたのね。ありがとう」
 
 
そして門の前まで見送る。
 
「あ、綱吉君っ、今度また遊びにいらっしゃい。貴方だけでも大歓迎よ!!一緒にケーキ作ったりお茶を飲んだりしたいわ〜。ザンザスの話も聞きたいし」
 
「はいっ、必ずまた会いに来ます!!」
 
 
そして笑顔で別れる。
 
 
 
 
 
 
帰り道。
 
今日はヴァリアー本部に泊まる事にしたため、そこまでそう遠くない距離を歩く。
 
 
「ザンザス・・・楽しいお母さんだったね」
 
「・・・正直ここまでとは思わなかった・・・」
 
自分の今までの葛藤やら反抗やらは何だったというのか・・・。
 
「でも、きっとあのお母さんの選択がどれか1つでも違っていたら、きっと俺達は出会えなかった・・・・・・そうでしょ?」
 
「まぁ・・・そうだな」
 
「だから、また行こうね!!」
 
「は?」
 
「だって、ザンザスの小さかった頃の話とかも聞きたいし、今のザンザスの様子とかも教えたいし!!」
 
「おまえ1人で行ってこい。俺はもういい・・・」
 
「え〜、ダメだよ。あ、お父さんとも会わなくちゃ!!どんな人なんだろうね〜。やっぱりザンザスと似てるのかな?お母さんとは似てなかったもんね」
 
「・・・・・・・・・・・・」
 
 
 
 
とにかく、親子の再会は果たされたが、また新たに微妙な溝が生まれたのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
〜後書き〜
すみません、遊びました。
結構前から書きたかったんですよ、母親との再会話。
そしてどうしてもギャグにしたかった。
ザンザスの母と綱吉は仲良くなってしょっちゅう遊んでいるといい。
お母さんがヴァリアー本部に来ちゃったりしたら大変そう(笑)
お父さんも勝手に作っちゃいました。
ザンザスは眉毛はお父さん似だと面白い。あと髪質も。
シリアスも全てギャグにします。
シリアス嫌いなんで・・・(しつこい)
2008.03.09
2008.03.10

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ