Un orologio senza un ago

□出会い
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「……これね…」



もうしばらく歩くと、彼女の前に姿を現したのはあの時計塔。
どこからでも見つけることができるくらい大きな時計塔は、実際に近くまで来てみると大きい…というよりも巨大なものだった。
塔のすぐ近くまできて上を仰いでも、肝心の時計はよく見えない。

(アラバスタのものよりも大きそうね……)


ふと、彼女はある砂漠の国のことを思い出す。
時計塔を軸に爆弾を設置した、という計画があの時はあった。そして、王国を消し去る――と。

あの時はこの一味とは敵対関係にあったはずなのに…。
まったく、何が起こるかわからないものだ。



そんなことを思いながら、視線を自分の目線の高さにまで落とせば、視界に入ってきたのはこの塔の扉。


壁も石でつくられていることから、どうやら扉も石造りのようだ。かなり頑丈そうに見える。


……押せば開くかしら?


そう思ったロビンはゆっくりとその扉に近づき、左手を扉に添えて……ぐっと力をこめる。




しかし、扉はびくともしない。


「やっぱりダメね」


なんとなくそんな気はしていた。
村長がこの時期は誰も時計塔には近づかないと言っていた。万が一、ここまで来てしまったとしてもそう簡単には扉は開かないようになっているのだろう。
その原因は、扉が頑丈な石でできているからか、内側から何かで止めているのか……。



ロビンはとりあえず周りを調べることにした。
もともと時計塔の中は後回しでもよかったのだ。周りから調べていって徐々に中心を攻めていけばいい。それに、きっと時計塔には入りたい仲間も若干名いるだろうし、どこかに違う入り口があるかもしれない。




「……?」


扉がついている場所の反対側まできてみると、その壁に何かが描かれてあった。
太陽が塔の影になってしまって、見えづらくなかなか発見することはできないだろうが。


ロビンは持ってきたライトを取り出して、壁に当ててみる。


よく見てみると、壁に何か描かれていたそれは……壁画だった。
風化してしまったのか、ほとんどが掠れてしまっていてちゃんと読み取ることはできないのだが、そこに記されているのは



「ウサギと……時計、かしら?」


ロビンが語尾に疑問符をつけたのは、はっきりとその絵が確認できなかった以外にも理由だあった。
ウサギはなんとなくわかるのだが、その近くにある時計はおかしなことに針がないただの数字が書いてある円盤のようなものだった。
それが時計と見当がつくのは、近くにその円盤にはまるであろう短針と長針が記されてあったから。



まるで、時計が2つに分離されてしまったかのような……。



その時計を一匹の白いウサギがじっと見つめている。
さらにその白いウサギの手にも小さくてよくわからないが、時計らしきものが握られていた。


分離されてしまった時計の後ろには大きな塔の絵。

周りには人らしき絵がいくつも見られた。



「――――し、――は消える。―――番人は白いウサギなり」



塔の上の方に書かれていたぼけた文字。
ロビンは声に出して読んでみた。しかし、肝心のところが消えてしまっていて読むことができない。


「ウサギなんていたかしら……」


昨日の記憶を辿ってみても、村でウサギの姿など一回も見かけなかった。
唯一見かけたとすれば、村長の家にあった置物くらいだ。



「ウサギ…時計…塔…獣……」



気になる単語をいくつか上げて彼女は頭の中で整理してみる。

まだ答えは見つからない。だが、少なくともここには何かがある。それは、彼女の長年の経験から感じるもの。


「一度船に戻った方がよさそうね」


太陽の傾きからして、ちょうどお昼になる前くらいだろう。
そろそろ買い出しに行くと言っていた3人が戻ってくるはずだ。
もしかしたらそこで何か新しい情報が得られたのかもしれない。

ロビンは必要なことをメモし、いったん戻ることにした。


この際、やはり彼女は一度も獣になど会うことはなかった。



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