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□頑張る君へ
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―For Sanji―


「んーーー……」

4人用のテーブルに1人で座り、そのくせテーブルいっぱいにノートや参考書とかを広げる。
……が、進む兆しがなかなか見えず、頭を抱え続けている。


ただいま私は喫茶店にて勉強中。



『わっかんないよー!!こんな問題!!!私に喧嘩売ってるんですかそーですか!!だいたい、この問題が将来どういう形で出会う機会があるのか教えてほしいんですけど!!』

周りから見れば、完全に“可哀相な人”に見える私の逆ギレは、しかしキレたからといって答えが導かれるはずもなく。ただただ、深い深い霧に飲み込まれていくような感覚に襲われる。


「どう?進んでる?」


と、そんな私に一筋の光が差し込まれた。
食事を運んでいる最中であろうサンジが私のところにきたのだ。

彼は、私が度々お世話になっているこの喫茶店でバイトをしている。
何回か通っているうちに仲良くなった。
しかも、彼自身が時々軽食とかを料理してくれることもあって、それがめちゃくちゃおいしい。
私にとってなくてはならない存在へとなりつつあるのも……まぁ、事実。


『全く全然』

私はお手上げだと言わんばかりに大袈裟にため息をついた。

「じゃあ、気分転換にどうぞ」


そう微笑みながらいうと、彼はテーブルに煎れたてのコーヒーと私の大好きなサンジの特製ガトーショコラを置いてくれた。


『え……これ…』

「おれからのサービス」

『ホント!?いいの!!?』

「ああ。今は客も少ないし。――それに、甘いものは脳の活性をよくするんだよ」

『じゃあ…お言葉に甘えて』


いただきます。と言いながらガトーショコラを一口。

『おいっしぃ!!!』

口に入れた瞬間一気に広がるその甘さはしつこすぎず、苦すぎず。
とろけるような甘さで、もう勉強の苛々とか全てを忘れさせてくれるようだった。
どうせなら、本当に勉強なんか放置してこのガトーショコラのためだけに生きていきたいです。


そんな幸せそうな私を見てかサンジがニッコリを笑うと、改めてテーブルに広げられた問題をまじまじと見た。


「今は何をやってるんだい?…数学?」

『うん。図形なんだけど、サッパリわかんなくて。もうどうしてできないんだろうね』

そうは言ってみるものの、私はガトーショコラのおかげでかなりの上機嫌だったりする。

すると、サンジは、ちょっと見せてもらってもいい?とテーブルの参考書とノートを見比べて考えだした。


でも、考える時間なんてほんの数秒ですぐに閃いたかのような顔をすると、私の隣に座ってノートにペンを走らせた。

私はぼんやりと、真剣に問題を解いているサンジの横顔を見た。
その表情は真剣だけどなんだかとっても楽しそうで、生き生きしていて、純粋にこの人は本当にカッコイイ人なんだなぁと思った。
なんとなく、料理をしている時もこんな表情をしてるのが想像もできて。…羨ましいなぁって。


……なんて思ってたらいきなりサンジと目が合って、思わずドキッとする。


「……できたよ」

『え!!?』



彼から渡されたノートを見れば、ばっちり答えまで導かれていて…完璧だった。
しかも、その解答をみると、どれも基礎という基礎の公式が組み合わせれたものだった。


『あぁ…そういう感じなのですか』

今まで無理矢理にでも、応用応用とばかり考えていた私には解けないわけで。

『なんか悔しいなぁ…こんな簡単だったなんて』

「基礎が大切なんだよ。料理と同じで」

『料理も?』

「ああ。どれだけ美味い料理を作ろうと思っても“下ごしらえ”がなってなきゃクソまずいもんになっちまうんだ」

『へぇ…』

「だから、数学も…何事も基礎が大事ってことさ」

『……勉強になります。でも、私にもできるかなぁ……基礎わかっててもそこまで発展できないし……』

「大丈夫」

サンジのすごさに圧倒されて、弱気な私に彼は


「君の頑張ってる姿…おれはすごく好きだから、さ」


なんてふいに言うものだから、パニックになってどうしていいかわからなくなって、残りのガトーショコラを口いっぱいに頬張って、コーヒーを一気飲みした。


内心では、死ぬ気でがんばります!!!と誓ったのはここだけの話。


救世主

(おかわりはいかがですか?)
(あ。コーヒーと…あと…)
(?)
(勉強みてもらっても…いい?)
(…喜んで)


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