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□頑張る君へ
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―For Zoro―
「……………」
『……………』
長い。
とてつもなく長い沈黙が続く。
と、いうよりも完全に私はフリーズモードとなっている。
とにかく勉強が、進まない。
『……………………』
「…………ぐー、ぐがー」
はい。ちょっとストップ。
『何どさくさに紛れて寝てるの!!』
私は大声で前の席に座っているゾロに向かって叫んだ。
それは2人しかいない教室中にやけに馬鹿でかく響き渡った。
そのせいか、んあ?と寝ぼけ気味でゾロが顔をあげ、私の方を振り返る。
「なんだ、もう朝か?」
『たった数秒しか寝てないでしょ!!』
「あ?」
『……あのねぇ…』
はぁ、と私は深いため息をついた。
こんなことばっかしてるから終わるものも終わらないのだ。
私たちの目の前にあるのは未だ提出していなかった課題。
期限も何もなかったために、すっかり忘れていて、そのままにしていたら気がつけば出していないのは、私と…ゾロだけになっていた。
いい加減に出せ、との指示が先生からあった私たちは、1人でやるより2人の方が早く終わるよ!!という作戦のもとに教室に残って取り掛かっているのだが………お、終わらない。
それどころか、一方のゾロは真剣に取り組んでるのかと思えば間もなくして鼾といううねり声が聞こえてくるときた。
『終わらせる気、ありますか?』
「なんとかなるだろ」
『なるかっ!!勝手にペンが紙に何か書いてくれると思ったら大間違いだから!!』
「……そういうお前は終わったのか?」
『うっ……!!』
ゾロに核心を突かれて思わず縮こまる。
確かに、私も人のことを言える立場ではない。
これくらいすぐに終わる!と思っているせいか集中がいまひとつな状況。頑張って集中するものの、すぐに集中力が切れて2ページくらい進んだらすぐに脱線モードに入るか、フリーズモードとなるか……。
(そう考えるとゾロとやってることはあまり変わらない、か)
つまるところ、やる気が出ないでいる。
「じ、じゃあ…ゾロはあと何ページ?」
『あ?残りか…』
自分の課題をペラリとめくる音が…1回だけ聞こえた。
ああ、あと1ページだな。
『…………は!?』
短く発せられた音がまたしても教室中に響き渡った。
『なんで!?いつ!?どうして!?何故に!?!?』
「そんなに疑問文並べるな」
険しい顔で言うゾロに対して、私は少々パニック状態に陥っている。
いつの間に彼はそんなに進んだのか……。
実際にパラパラと課題帳を見せてもらうと、確かに…答えが合ってるかは別として、ほとんどの問題が埋められている。
『うわー…こんなに進んでたなんて……いつやったの?』
「さっき。おまえが完全に固まってる間に」
『……なんか……ごめんなさい』
シュンとなりながら一言謝罪。
先程あんなに怒鳴った自分に一発喝をいれてやりたい。
言われてみれば、ゾロって短時間で集中することができて、その間にこなすのが得意な人だ。彼が寝だしたのも一段落ついた証拠だったりしたりするかもしれない。
それに比べて、私はといえば集中できても短すぎてすぐ放棄してしまう。
『はぁ……その集中力、ください』
「あげられるか!」
完全に形勢逆転だ。
それなのに、今一歩私の集中力は欠けたままでいる。
まずいとは思っているんだけれども……。
そんな私を見てか、だったら……、とゾロが言う。
「それ終わったら、なんか食べにでも行くか?」
ホント!!?
そういいながら、おもいっきり目を輝かせたのが自分でも笑えるくらいよくわかったし、呆れ顔のゾロからでも判断できる。
「ああ。だから早く終わらせるぞ」
『了解!!!』
ビシッとひとつ敬礼をしたあと、私は自分でもびっくりするほどの勢いでペンを動かし、回りの事には目もくれずにノンストップで一気に課題を終わらせるのだった。
ご褒美
(馬鹿がつくほど単純だな…)
(え?なに?奢ってくれるの!?わーゾロ優しいー!!)
(なんでだよ!!?)
→sanji