tempt
□頑張る君へ
2ページ/6ページ
―For Luffy―
『うぐぅ……あぁ―!!もう、嫌だ!!』
バシンとノートを閉じる私。これでもう何回目の動作だろうか。
いくら勉強をしようと思っても思っても、思うだけでやろうとはしない。
自分と戦い続けてもうどれだけの時間が経ったのか。
まぁ、その経過時間を知っても、ヤバイ。と思うだけなんだけど。
とりあえず、ここまでの進行状況はノート1ページとみた。
『ま、まぁ…先週は頑張ったし』
アハハと独り寂しく机と会話した自分はそろそろ末期のようだ。
『うぅ…』
虚しくなった私は思わず机に伏せる。
そうだ、このまま寝てしまおう。きっと勉強のし過ぎで疲れてるんだ、うん。疲れは勉強の敵っていうし!!30分だけ寝―――
よ、そんなとこで何してんだ?
しかし、そんな疑問文が上から降ってきたために、私の思考回路は再起動し始めた。のそりと顔を上げれば、どこから入ってきたのか隣の家に住むルフィが…いた。
『ルフィ……どうして私の部屋に…?』
「そりゃァ、窓から――」
『じゃなくて、なんでこの部屋に入ってきたのかって聞いてるの』
「暇だったから!!」
あまりにも即答で元気いっぱいに答えるから、返す言葉も見つからなかった。
と、いってもそんなことは十分にわかりきっていたことなんだけど。
時々、ルフィは私の部屋に何の前触れもなく窓から軽やかに侵入してくることがある。
それは今に始まったことではないので、本人にツッコミを入れる気は全くないんだけど。
「おまえこそ、なんでそんなに元気ないんだ?腹減ったのか?」
『……現実逃避に失敗したから』
現実とーひ?と、首を傾げながら言葉を反芻する。意味を理解してないようで。
そりゃあーそうですよね。思うがままに生きるあなたには無縁のお言葉ですから。
『よーするに、勉強と格闘してたわけ』
「ああ!そういうことか、それを先に言えよなァ」
いやいや。そこまで言わなきゃわからない……って毎度のパターンなんだからいい加減覚えてほしいんですけど。
「大変だなーおめェも」
『……ってそういうルフィは勉強してないの?』
いくら学校が違うとはいえ、隣に住むルフィ。
そういえば、高校に入ってからのルフィが勉強している姿を一度も見たことがない。
(中学の頃は私が無理矢理指導したっけ)
「おう!してるぞ」
『ええ!?』
まさかの返答に思わず目を見開いた。
アリエナイ。あのルフィがちゃんと勉強してるなんて……勉強してるなんて……!!
「今日はカブトムシを見つけた!!」
……はい?
「それから、しばらくカブトムシを追いかけてたら、うまそーな木の実があって、でも食べたらまだすっぱくて―――」
『……ちょっとストップ』
「?」
『あんた……何の科目勉強したの?』
「かもく?そんなの関係ねーよ」
か、関係ないって、おい!!!と思わずツッコミを入れようと声を発しかけたが
「だって、いろんな経験を積むことが勉強なんだろ?」
なんて言われた瞬間には、開いた口が塞がらなければ、声も上げられなかった。
そんな言葉……一体誰に教わったのだろうか。いや、いろんなことを身につけてるルフィ自身が思ったことなんだろうけども。
「だから、いっぱい勉強すれば、いろんな経験になるんだぞ!」
あーもう、お手上げです。
私が反論できる余地はどこにもないわけで。
もしかして、これはただ単に私の経験不足でしょうか?
『はぁ……。わかりましたよ』
「?なにがだ?」
『現実逃避、やめる』
「おう、頑張れよ!!」
あれ?ルフィ…現実逃避の四字熟語の意味理解できてたりする……!?
ま、いいや。どっちでも。
ただなんとなくルフィには負けたくないと思うから。
私は私なりに勉強して……ルフィに反論できるくらいになってやる!
しょうがないから私はとりあえず、勉強という敵にリベンジをすることにした。
好敵手
(で、実際学校の成績はどうなわけ?)
(いつも丸がいっぱいだ!)
(………その点数で胸を張られるの、なんか悔しいんですけど)
→zoro