お題
□大切な記憶
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ひこうき雲を見上げて
お昼過ぎの穏やかな時間。
スッと一本線に伸びた雲がずっと向こうの空まで孤を描いていた。
まるで、橋の用な雲。
そんな雲を見つけたブルックは空を仰いでジッとそれを見つめた。
もう、霧から抜け出して大分経つけれども、それでも青い空を見ることにブルックはまだちょっと変な感じがしていた。
なんてったって、空が海と同じ色をしているのだから。
そこに描かれている雲もまたおもしろい。
かれこれ何年も雲というものをちゃんと見なかったが、それでもいくつも時を経ても雲は相変わらず雲だった。
そんなことを思いながらブルックはずっと遠くまで伸びている雲を見る。
「ヨホッ。不思議な雲ですね……。なんていう名前なんでしょうか」
彼は小さく呟いた。
雲にはいろんな名前があるけれど、あの雲はなんていう名前なんだろうか。
ナミに聞けばわかるかもしれないけれど、呼んでいるうちに消えてしまうかもしれない……
「あ」
そしたら案の定。
海に近い所から徐々に雲の形が崩れていった。
まるで空に溶けるかのように。
まるで虹が消えるように。
その光景は確かに、時の流れを教えていた。
止まることなんてできない。
ブルックはジッとあのスッと伸びた雲が滲んで、また雲になっていくのを黙って見ていた。
やがて、もう孤の姿が完全にわからなくなったとき……
それでも雲は相変わらずの雲だった。
(今も昔も変わらないもの)