Un orologio senza un ago
□巻き戻し
1ページ/4ページ
コツコツコツ
軽快な足音がそこら中に響き渡り、いろんなところで音が反射する。
「どうでした?彼らの様子は」
そう声をかけられるとその足音はピタリと止み、代わりにカラコロと音が聞こえた。
「うん。十分楽しませてくれそうだよ」
「そうですか……」
彼に話しかけた人物は低く呟く。
「でもお楽しみはこれから……でしょ?」
カラコロと音を立てながら言う言葉のその最後の語尾は、少し遠くの方に投げかけられたものだった。
「ああ、おまえの言うとおりだ」
それに答えるようにくくっと笑う声が聞こえる。
「しかし、なんでまたこんなこと……」
「いいじゃないか、自力でここまできてもらっても。それに――」
「それに?」
「――まだ役者が揃っていない。姿を現すまでそう時間はかからないと思うが」
まるでそのことを心待ちにしているかのように言う。
「――では、次は私が」
「えー、今僕が行ってきたばっかじゃん」
「暇つぶし……にね」
そういうと今度はカツンカツンと規則正しく足音が響き、やがてそれは遠くなっていった。
.