Un orologio senza un ago

□夜の訪問者
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突然2人の声でもクルーの声でもない声がした。

彼らはその声の方向に顔をあげる。

声の主はメリー号が停泊している目の前の白浜にいた。



真っ黒なフードを深くまで被った小柄な少年。


いつの間に自分達の前にいたというのか。島を見ていたロビンでさえも声をかけられるまで彼の存在には気が付かなかった。それはゾロも同じである。


「あなたは?」


動揺はしたロビンだったが、それでもなるべく相手にそれを見せないように平然を装い少年に話しかける。
口元だけしかわからないがその少年はニコッと笑っていた。
その口にくわえているのは棒。それを転がしているように見えるがその際にカラコロと音が聞こえてきた。棒つきのキャンディでも舐めているのか。


「笑ってねェで答えろ」


その間にゾロは見張り台から飛び降り、ロビンの隣に来た。
右手は鍔に、左手は刀の柄に触れていて、警戒心を強め臨時体勢に入っている。
気配もなく急に現れたのだ。子どもだといってもただ者ではない。


「そんなに睨まなくてもいいじゃんか」

ケラケラと少年は笑った。何がそんなに楽しいのか。
それに合わせて口の中に赤色の飴玉が月明かりの中薄っすらと見えた。

ゾロもロビンも怪しい少年をジッと見る。


何の反応も見せない2人を見た少年は、チェ、つまんないの。と少し口を尖らせて砂浜を蹴った。


「でもまァ、いいや。もうすぐ時間だから」

「時間?」

「何のことだ」

「あ、お兄ちゃん達にはあんまり関係ないんだけどね。…この島の“ルール”だから」


そう淡々と少年は話し続け、今度はニヤリと笑った。
しかし、襲ってくる様子は見られない。

少年の言葉を理解できないゾロとロビンは怪訝そうな顔をした。


ガリッと突然少年は飴玉を噛み砕く。







「ねェ、時間なんてなければいいのにね」







「てめェ、いい加減に……っ!!?」


それはまるでその少年の言葉が合図かのよう。


彼のところへ行こうとしたゾロの足が突然止まった。
急に頭に激痛が走った。
体が大きく揺れ、立ってられるのもやっとといったところ。
思わず頭をおさえて船縁に手をつける。


(何が起こった…!?)

「ほら、今日が終わる」


慌ててゾロはロビンの方に視線を送ったが、彼女も同じようで冷や汗をかきながら座り込んでいる。

段々と彼らの意識は朦朧とし始めて、頭が痛いというよりは瞼が重くなり始め…眠い、という感覚に襲われる。


「な…何を…し、た」

「僕は何もしてないよ」


自分達は意識もギリギリだというのに、少年は顔色ひとつ変えずに笑いながら答えた。

バタリと音がして隣を見ればロビンが倒れていた。
冷や汗は引いているが目を開ける気配は見せない。



「…くっ」

やがてその現象はゾロ自身の身にも降りかかってきた。
もう立っていられる状況ではない。頭が働かなくなってきた。目もまともに開けられない。


「もう少し楽しんでいくといいよ」

彼らの様子を一通り見終わったかというように少年は踵を返してそう呟くとゆっくりと歩き出した。


「てめェ、待…」


バタッ


とうとうゾロも倒れた。
もう体も頭も動かない。意識を完全に手放してしまった。





「さァ、今日の始まりだ」





不気味に笑いながら大声で言う少年の言葉は誰の耳にも入らない。





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