Un orologio senza un ago

□夜の訪問者
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――そうして夜は更けていった。

昼間の賑やかな様子だった村も見た目はとても賑やかそうだが、今はしんと静まり返っている。不気味なほど物音がしない。



それはここメリー号も同じだった。
疲れがたまっていたのだろうか。
今日はサンジもいつもより少し早めに仕事を切り上げて部屋に戻っていった。
そして各々が眠りにつく。
村と違うところいえば、静かといえば静かだが、相変わらず男部屋の鼾の合奏は凄まじい。



「……ったく、うるせェな」


キュポンとビンを口から外した音と共に低く呟いたのはゾロ。
彼は今見張り台で不寝番をしていた。
こんな波の音しか聞こえない静かな場所では下の部屋にいる野郎どもの鼾さえも聞こえてきてしまう。


静かに酒も飲めやしねェ…と1人不満を漏らしながらも、また酒ビンを煽り上から島全体を見回した。
暗くてよくわからないが、こんな時でも目に付くあの大きな時計塔。
あれは一体何なのだろうか……。


ガチャ


すると下のほうからドアが開いた音がした。
誰か起きたのか思って、思わず下を見下ろす。

ドアから出てきたシルエット。
もうすぐ真上に上る月の明かりで薄っすらと照らされたそれは、ロビンのものだとわかった。



ゾロは声をかけようかどうしようか少し迷った。
別にロビンだからという理由だけではないが、こんな時間に誰かが起きてくる時はたいてい眠れないか気分転換がしたいか。
そんな時はヘタに声をかけるのもどうか…というのがゾロの中であった。何より、特にロビンに対してはこんな時どう声をかけたらいいか悩むところが少しある。


「剣士さん、起きているのでしょ?」


しかし、そんなことを1人であれこれと考えていると先にロビンの方から声がかかった。
ゾロはどうしたものかと思い頭を掻いたが、仕方なしに見張り台から顔を出して、ああ、と返事をした。


まるで起きてるかどうかだけを確認しただけ、と言うかのようにロビンは彼の返事に対して、フフッと笑うとそのまま甲板に出て船縁にそっと寄りかかった。
彼女の視線の先には時計塔があるのだとゾロはなんとなくわかった。


「そんなに気になるのか、あれが」

「そうね。普通じゃ考えられないもの」

「あ?」

「数百年も狂わない時計だなんて……」


何かあるとしか思えないわ。とロビンはゾロの方へは振り向かず、島の方向を見たまま言った。
彼はそれに対して言葉を返さない代わりに、自分も時計塔の方を見た。


ゾロにとっては彼女が思う「考えられないもの」というのがいまいち分からなかったりするのだが、それを考えたところで本人にとってはそれほど重要なことではないと思った。


ロビンもそれ以上は何も言わずただ夜風にあたりながら島をみている。



「お姉ちゃん達、まだ起きてたんだ」


「「!?」」



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