Un orologio senza un ago
□夜の訪問者
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村長の家の外で聞こえた騒音を聞きつけてナミ達はゾロに一歩遅れて外へと出た。
「ちょっと!一体何の騒ぎよ!!」
ナミは声を荒げながら顔をあげてゾロを見る。
先に飛び出したゾロはというと、一足先にその騒音がした方をじっと見据えていた。
ナミもつられて振り向くと、そこには凄まじい土煙が立ち込めている。
「何が起こったんだよ…」
ウソップはゾロの後ろに隠れながら恐る恐る土煙から何が出てくるのかと見ている。
その騒動に気がついたのか、広場にいる村人達も集まってきた。
段々と風によって土煙が晴れていく……。
「……ん?ありゃァ…」
ふと、その晴れてきた土煙の中に見覚えのあるシルエットが浮かび上がってきて、ゾロはさらに目を細めた。
そして、段々と見えてきた麦わら帽子――
「アヒャヒャヒャ!あーおもしろかった」
「「ルフィ!!?」」
そこから姿を現したのは、帽子を被りなおして服についた埃を払うルフィだった。
「おもしろかったじゃねェよ、このクソゴム!!」
「し、死゙ぬかと思っだ…」
「サンジとチョッパーも!おまえら無事だったのか!」
「ん?おお!なんだおまえら、ここにいたのか!!」
ルフィが声のした方を振り返ればそこには離れ離れになってしまった仲間たちの姿。
さぞ、会うのが当たり前かのようないつもの調子で彼はウソップ達に声をかけた。
そんないつもの姿を見て、ウソップ達の表情はいつの間にか安心しきったものに変わっていた。
「んナミすわーーん!!!ロビンちゅあーーん!!!寂しい思いをさせてごめんよォォ!!!」
「み゙んなァァ!!よがった、ちゃん゙と会えて!!」
サンジはハートを盛大に飛ばしながら、チョッパーは涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながら、彼らのもとへと駆け寄った。
とりあえず、これで全員無事に合流できた、ということになる。
「な、なんじゃ…おまえさんたちの知り合いか?」
そんな一部始終を口をポカンと開けながら見ていた村長は、そんな和やかな雰囲気を見てハッと我に返りナミ達に尋ねた。
「え、ええ。私達の仲間よ」
「ん?誰だおっさん」
「この村の村長だとよ」
「へェーそうなのか、おれはルフィ!よろしくな!」
「ホホ、元気がいいのォ。…ところで、おまえさんたちどこからここへ来たのじゃ?」
軽く村長が笑ったかと思うと、片眉をあげてルフィ達に尋ねた。
ルフィはそれに、ん?と少し首を傾げてから答える。
「どこって……あっちから。飛んできたんだ」
「なんじゃと!?」
彼が指を指したのは自分達が先ほどまでさ迷っていたあの密林。
すると、村長や広場で彼らの様子を見ていた人たちが急にどよめき始めた。
青白い顔をしている者もいる。
密林から来たのがそんなにおかしなことなのか。
サンジ達は彼らの反応に疑問を抱いた。
「まさか…時計塔には行っておらんじゃろうな」
「時計塔?塔って、あれのことか?」
サンジはクイと親指で密林にそびえたつ塔の方向を指した。
村長はコクリと頷く。
「まァ、行こうとはしたけどな……」
「勢いよく飛びすぎちまって、時計塔を通り越してここまできちまったんだ!!」
ドーンと胸を張ってルフィは笑いながらそう言った。
おまえな…という呆れたため息が誰からか聞こえてきたのは言うまでもなく。
「そうか、それならいいんじゃが…」
一方のそれを聞いた長老は安堵した表情で胸を撫で下ろした。
それから、ズイとその低い背丈を背伸びさせてルフィに迫る勢いで近づく。
これには思わず彼も焦りの表情を見せた。
「決して――2度とあの密林に、特に時計塔に近づいてはならん。今はな」
「どういうこと?」
横からナミが尋ねる。
「あの時計塔は今、この祭の時期に合わせて清められているのじゃ」
「清められてる?」
「そうじゃ。1年に1回こうして祭を開いて感謝する他にそういう理由もあるんじゃ」
「でも、あの密林の中には凶暴な獣がたくさんいたぜ」
「そうだ!それでおれ達追いかけられて――」
サンジとチョッパーはさっき自分達に起きたことを振り返った。
密林には大勢の獣達がいた。しかもどこか様子がおかしかった。
そいつらが密林の中をうろついているというのに、果たして“清める”なんてことができるのだろうか……
しかし、その言葉に今度は長老が首をかしげた。
「はて…。そんな凶暴な獣などこの島にはおらんと思うが……」
「え?」
「ここ最近誰も密林には近づいておらんからのォ。何かの見間違いじゃないのか?」
サンジとチョッパーはお互いに顔を見合わせた。
たしかにあれは見間違いなんかではない。現に自分達は襲われたのだ。
だとしたら、ここに住む村人にだって何かしらの被害があってもおかしくない。
それなのに……一体どういうことなのか。
彼らは怪訝そうな顔をした。
ルフィだけはどうやらこの事態を把握できていないようだが。
「それより、どうじゃ。もうすぐ日が暮れる。せっかくなんだからわしの家に泊まっていかないか?」
そんな雰囲気を変えようと、村長は少し声を明るくして提案をした。
たしかに、いつのまにか日は西に沈みかけていて、先ほどまで自分達の周りにいた住民達も今は準備の最終確認と片づけをしていた。
「お!いいのか!」
「あ、大丈夫です。私達、自分達の船があるので」
ルフィが村長に答えるのと同タイミングですかさずナミが村長の誘いを丁寧に断った。
「なんだよ、ナミ!せっかく歓迎してくれるって――」
「いいからちょっと黙ってなさい」
口を尖らせてブーイングするルフィをナミは小声で、しかしその迫力は変わらずのまま彼を一喝させて黙らせた。
「そうか…。じゃが、まァ、明日からの祭は来てくだされ。盛大にやっているからのォ。おまえさん達なら大歓迎じゃ。また旅の話でも皆に聞かせてやってくれ」
「お!それなら任せとけって!!」
ウソップは顔を輝かせて即返事を返した。
それを見た村長はニコリと微笑むと、ではまた明日。と言ってゆっくりと家へと戻っていった。
そのドアが閉まるまでを7人はじっと見ていた。
「じゃあ、メリー号に1回戻るわよ」
バタンと村長の家のドアが閉まる音が聞こえた後、ナミは皆にそう言った。
「おいおい、よかったのか、せっかくの誘いを断って」
「言っとくけど、私達は海賊なのよ。メリー号もあのままにしておけないし。何かあったら困るでしょ」
村長の気持ちは確かに嬉しかったが、ナミの言い分も最もである。
「そうだな、サンジ!腹減った!!」
「へいへい」
もう今は晩飯のことしか頭にないルフィを先頭に一直線に彼らはメリー号へと戻る。
道中の景色を見るともう祭の準備が万端で、さっきよりも屋台の数も増えていて、装飾も鮮やかだった。
これは本当に盛大なものになりそうだと、彼らは内心ワクワクしていたりもした。
こうして静かに太陽が西の海に沈んでいく――。
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