Un orologio senza un ago

□プロローグ
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――事件が始まりを告げたのはあの日


ヒューッ

ドガァン

ヒュルルルル ヒュルルルル…


うぅぅわぁぁぁん!!


焼き払えー!!




生々しい機会音や雄叫び…悲鳴が島中に響き渡る。





逃げ場は、ない。





「逃げろー!!」

「何なんだよ、こいつらは!?」

「体力があるやつは武器を取るんだ!!」


戸惑う人々はあちらこちらと逃げ惑う


「そ、村長!!」

「マズイことになったの…」

「まさかやつらの狙いは!?」

「わからん。だが、あの塔はそう簡単に崩れんさ」

「く、組み木が!!」

「なんというタイミングの悪さなんだ…」

「おじいちゃん!!」

「すまんのォ、せっかくの祭が――」

「そんなことより早く逃げないと!!」



慌てる村人だが、“村長”と呼ばれる老人は静かにゆっくりと手招きをした。


「コリョ」

「………」

「何があってもこの時計を放すな」


「コリョ」と呼ばれたものはただ真っ直ぐに老人を見つめ、頷く。


「もしもの時は…頼んだぞ」

「……」


その言葉を聞いたコリョは頷くことも瞬くこともせずに、黙ったまま村長を見つめた。
――その瞳には涙が溜まっているのだろうか?



大騒ぎとなった人々の声が力なく聞こえる
それを掻き消す爆音の数々……。





まもなく





その島は荒地と化した。“あの島”のように。



それなのにまだ




あの塔は静かにそびえ立ち、時を刻んでいた――




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