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□愛の中で迎える聖夜 フリーSS
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〔夢の中で迎える聖夜〕


Dormi vangia nei campii
pastor e dormivan
le greggi
quand'eccounchia...

Apparveallor
inbianco splendor
un Arcangeloe disse:
"Sia gloriaal Signol!"

Noel Noel Noel Noel

oggi e natoil
Re d'lsrael!



この讃美歌がさっきからラビの頭の奥で響いている。
何故かは解る、今日は聖夜(クリスマスイヴ)だからだ。
きっと「もう一人の自分」が頭の中で吟っているんだと思う。
だってこの歌声は紛れもなくディックの歌声。




****

「ディック…?」

「やあラビ。」

ディックとラビが出会えるのは夜の夢の中だけ。
其はそうだ。
ディックはラビの中に眠るもう一人の人格に過ぎないから。
だから、恋に堕ちる何て有り得ない事なのに。
何が起こるか解らないのが人間なのか。

「やっぱり、来ると思った。ディックずっと歌っていたでしょ。」

「クリスマスだからね。御免煩かったでしょ。」

「ううん。ディック歌上手いから大丈夫さ。」

こうやって夢の中で逢えるだけで幸せ。
そう思うのが妥当だろう。
そうでもしないと更なる欲望が二人を襲うのだ。
このまま夢の中に居たい、とか。

「御免なラビ。オレからのプレゼントが無くて。」

「良いよ気にしないで。こうやって逢いに来てくれるだけで幸せさ。」

ラビは軽く頬笑む。
ディックもつられて笑う。
ディックはラビのこの堪らなく温かい性格が愛しくて大好きだった。
否、羨ましいかった。

「ねえディック…」

真っ直ぐ目を見つめてラビはディックに問掛ける。
何か真剣な話だと察しディックもラビを見つめた。

「何でオレ、このままディックと一緒に居ちゃ駄目なの?ディックもオレと一緒に居たいでしょ?」

辛辣な言葉に暫く言葉を詰まらせた。
だが直ぐに答えた。
この話は何回もしたことがあるから。

「そりゃ、オレもラビと一緒に居たいよ。でも其よりもラビには幸せになって欲しいんだよ。
大切な仲間も居るし、ブックマンだって継がなくちゃいけないしさ。」

とっさにラビは言い返す。

「何で?仲間とかブックマンよりもオレはディックと一緒に居た方が幸せだよ?このまま夢の中に止まっていた方が幸せだよ?」

翠の瞳が少し潤いを増している。
必死な問掛けがディックの心を激しく揺さぶった。
彼の言う通り、このまま夢の中に居た方が楽だろう。
しかし其では彼の為にはならない事は解っている。
そして自分の為にも。

「そんなの、本当のラビの幸せじゃ無いよ。」

「本当の幸せ…?」

「そう。」

途端にディックはラビの躰を引き寄せた。
そして優しくなだめる様に抱擁させる。
言葉にならないクリスマスプレゼント。

「ラビには沢山の可能性があるんだよ。
ラビのだけじゃ無い、オレの分もある。
だからその可能性を使い切って、其でも幸せになれなかったらオレの所においで。
苦しい時も辛い時もオレはラビの中に居るから心配しないで。」

嗚呼何て汚い綺麗事を言っているのだろう自分は。
このまま自分だけのラビにする事だって出来るのに、そんな自分に怒り悶える。

「ありがとうディック…ディックのそういう優しい所大好きさ。」

何とも幸せそうな笑顔。
この子は恵まれているんだ、恵まれている子をわざわざ自分という闇に独占する権利は何処にも無い。
そう自分に言い聞かせなくては本当に夢の中で安楽死させてしまう。

「オレもラビが大好きだよ。」

額に小さく接吻。
そうしたらラビはまた幸せそうな笑顔を見せた。
ディックの胸はたったこの一つの笑顔で満たされるのだった。

「ねえディック、オレ欲しい物があるの。」

「何?」



「終わらない愛を頂戴。」




「馬っ鹿だな。そんなのとっくのとうに貰ってる癖に。」

「あれ、そうか。」

くすくすと微笑む。
この瞬間がとてつもなく貴くてどんな暖炉よりも暖かい。

「……そろそろ目が覚める時間さ。」

「そっか、じゃあまたね。」

「……うん。」

微妙に切ない表情が何とも印象に残った。
そうして気が付くと暗い暗いこの空間は独りになっていた。
また暫くは孤独だろう。
また明日逢いたいとも思うが其ではラビの為にはならない。

きっと自分より良い相手を見付けるだろうラビは。
そしてその時はオレが消えるべき時。


確に終わらない愛を捧げよう。
君がオレを忘れた頃に。
そっと。






The end.





***
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