ぷよぷよ
□クッキー
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「あ、いたー」
「・・・」
また来やがった。
この水色のアンテナの付いたガキ。
あの日から時間はまちまちだが、大体学校が終わってから来ているらしい。
わざわざ菓子を食うために。
「ここはお前の家じゃないだろ。帰れ」
「クッキーたべたい」
「聞け」
こいつが帰れと言っても帰らない奴なのは知っている。
だからいつもは適当に何か作って渡してやる。
だが今日はたまたまクッキーを作っていた。
・・・本当にたまたまだ。
「ほら、やるから帰れ」
「わーい」
「おい!帰れって言ってるだろ!ここで食うな!」
「やだ」
「お前な〜・・・」
渡した直後にピコピコとアンテナを動かしながらクッキーを食べている。
どうやってアンテナを動かしているんだ?
「おいしい」
「はいはい」
「♪」
「ご機嫌だな」
「追い出されない」
「何度やってもお前は入ってくるだろ」
「うん」
もうこいつを追い出すのは諦めた。
菓子を食わせれば静かにしているし、満足すれば勝手に帰って行くからだ。
「お前、早く帰らないと親が心配したりするだろ」
「・・・しない」
「してるだろ」
「しない。だって・・・」
「は?」
菓子を食べるのをやめ、アンテナは揺れなくなり、寂しそうにしょぼんとしている。
なにかまずいこといったか?
「おい、どうした?」
「・・・なんでもない。アミティたちのとこいかなきゃ」
まだ残っているクッキーを食べ、なにもなかったようないつものボーっとした顔で出て行こうとする。
こいつ、意外といろいろ考えている奴なんじゃないか。
「おい」
「?」
「どうせ、明日も来るんだろ。何が食いたいんだ」
「!・・・ドーナツがいい」
「そうか」
またアンテナを動かし、ばいばいと言って出ていく。
・・・あいつもただのガキじゃなさそうだな。