魂の炎
□ちょっと過去な一話
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そうしていると時間は流れるように過ぎていき、高かった筈の日は暮れかけ、血のように紅く色づいていて不気味な色に染められていた。
それでも俺はずっと空を見つめていた。
まるであの人達が戻って来て嘘だ、なんて言ってくれるのを待っているようで、頭では帰って来ないことを分かっているのに感情が付いてきてくれない。
「アハハハハハハハハハハッハハハハハハハハハッゲホッガホッ」
何処から聞こえてくる乾いた笑い声がうるさいと思ったらそれは自分の喉から出ていて、噎せ込んで初めて気づく。
「おいッガキ。こんな時間に何してやがる」
黒い制服を着た人がこちらにやってくる。
声を聞いて振り返った俺に驚いて歩く速度を速めてくる。
「テメー何、泣いてんだ…?」
俺の元にまで来て覗き混込んでくるその瞳は何処かあの人と似通っていて。
俺の瞳から涙が次々と溢れだす。
「お、おい!?」
男は困ったような顔をして頭を撫でる。
我慢、出来なかったんだ。
俺は傘を捨ててその人に抱き付く。
普段だったら知らない奴なんかに触らせないし、あの人以外には抱きつくなんて事はしない。
気がつくと口から言葉がこぼれていた。
「俺、兄上に、捨てられて、でも、今思うと、あの時兄上悲しい、顔、してて、でも、俺、要らないって言われて…何が、正解なのか、分かんないよ。」