大天の羅刹
□野晒しの一話
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屍だけが溢れる荒野を3,4才位の少年が十数人の大柄な異形の男と戦っている。
透けるように白い肌の大部分を薄汚い布切れで隠した少年は息を切らせ、まるでくるくると踊っているかのように自分の2,3倍はある相手をあっという間に叩きのめしていく。
その一切の容赦なく叩き込まれる拳は、明らかに子供の出せる物では無い。
そう、少年はいわゆる天人と呼ばれる中でも戦闘力最高と言われる夜兎の血を引く子供なのだ。
だが、幾ら夜兎と言えど幼い子供。
それまでずっと走っていたこともあり、大人達に捕まってしまう。
少年は抵抗するが明らかに体力切れで動けていない。
「「「何をしてんだよ!?お前ら!!」」」
幼い三つの声が響く。
始めに紫がかった黒髪の翡翠色の瞳を輝かせた少年が物凄い速さで躍り出る。
その速さは普通の人間が目ですら追えないレベルだ。
「えぇ!!晋助、早えぇよ!」
と叫んだふわふわした天パの銀髪で、緋色の瞳を持つ少年が二番手。
こちらは速さ、というよりは臨機応変に技を繰り出すタイプのようで、その技は奇想天外で、大人であろうと対応は難しいだろう。
というか出来ないだろう。
「全く。お前らは少しは落ち着け」
そう冷静に言った、長く美しい髪を高くに束ねた蜂蜜色の瞳の少年は、少年を捕まえている男に斬りかかる。
こちらは技の一つ一つが美しい。
普通の人間が二十年かけてこのくらいまで行けるか分からない位に洗練されている。
異形の男達はあっという間に全員切り捨てられた。