○REBORN短編
□死と存在意義の関連性。
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”人は、死んだらどこへ行くのかな?”
「___骸君」
鮮やかな赤い夕陽を背景に、
屋上に伸びた二つの影。
「夕日、綺麗だね」
「…ええ、そうですね」
屋上に立つ骸。
そんな彼に話しかけた彼女は、フェンスの上に座っていた。
ふらりと傾けば、今にも落ちてしまいそうな少女。
「…骸君、私ね」
「…はい」
「死にたいの」
「………そうですか」
少女の口からさらりと紡がれる、思い言葉。
それを骸はただ受け止めるだけ。
「…あ、止めないんだ」
「ええ。これは貴女の人生ですからね。
僕にそれを止める資格はない」
下を眺めながら足をゆらゆらと揺らす。
そんな彼女を見つめる骸の目は、彼女を見ていながらもどこか遠くを見ていた。
「わーお、発言男前だね」
「クフフ…ありがとうございます」
苦笑する骸。
暫くの沈黙の中、二人の間に風が吹き抜けていった。
「…あぁ、そうだ。
せめて死ぬ前に理由を教えてください」
ふと思い出したように口を開く。
うーん、としばらく考えるそぶりを見せる彼女。
「理由、かぁ…。…好奇心?」
「好奇心…ですか?」
「そ、好奇心。
人は死んだらどうなるのかなーっていうね」
その言葉に、骸がわずかに眉間に皺を寄せる。
もう十分すぎるほどに死という存在を感じてきた彼にとっては、その疑問は理解しがたいものだった。
「人間は…死ねば、六道冥界のいずれかに行くんですよ」
「うん。それは知ってる。前に骸君が教えてくれたもの」
「…では、貴女は僕の言うことを信じていない、と?」
訝しげに眉を寄せる。
しかし、その姿に嫌悪という感情は感じられなかった。
「ううん。そうじゃない。だって骸君はそれを経験したんでしょ?だったら、信じるしかないじゃない。
でも、私はそれをまだ経験してないから」
上体を振り向かせ、骸を見る。
骸は、なるほど、と納得したようにうなずいて見せた。
「ほう…。存在は認めても、確信は持たない、ということですか」
「さすが!頭のいい骸君はよくわかってるね!」
これから死ぬつもりだというのに、無邪気に笑う少女。
骸はそれが不思議でたまらなかった。
人は、自分が死に直面した時、今までの生涯を悔い懐かしむものだと思っていたのに。
彼女からは、それが感じられないのだ。