○REBORN短編

□好きって言って!
1ページ/2ページ




 





 



 








誰だって一度は、

恋人に、『好き』って言ってもらいたくないですか?
















 




「名無しさん。問題です」


「?なーに、骸」




黒曜ランド。

ソファーに座る彼女は、恋人からの呼びかけに読んでいた雑誌から顔を上げた。

首を傾け自分を見る愛しい彼女に、
骸はわずかに頬を染める。




「好き、って十回言ってください」


「たすきを隙間なく締めた少年はスキップで位置についた。
種目はパン食い競走。
コースきっちりまで目をやる。
パンは遠く、油断も隙もない。
リスキーだが空きっ腹で良かったと、
髪を手で梳き少年はすすき揺らぐ透き通った空を眺めた」


「確かにすきって十回入ってますけどいろいろ違いますよ?!Σ」



首を傾けたまま早口で即答した名無しさん。
その謎の頭の回転の速さと突飛な発言に、骸はツッコミスキルを総動員せざるを得なかった。



「え、違うの?問題でしょ?
とんち勝負的なあれなんじゃ…」


「ち、違いますっ!!僕が言ってほしかったのは、
単純に、『すき』じゃなくて『好き』、なんですよ!」



心外だとでも言うように驚く彼女に、
なんとか自分の意図を汲んでもらおうと若干声を荒げる。



「…?好きって十回言えばいいの?」


「ええ、単純にですよ。即興の小話とかいりませんからね」


「わかったー」


「はぁ…。…では、もう一度お願いします」



やっと意味を理解した様子の名無しさん。
そんな彼女に骸は小さくため息。

それを全く気にしていない様子の名無しさんは、雑誌を置いて傾けていた首を起こした。



「じゃー…すきすきすきすきすきすきすきすきすきすき」


「君の僕への気持ちは?」


「きす!……あ」


「クフフ…」



自信満々に間違って、小さく声を上げる。
それに愉快そうに笑う骸。



「ただのひっかけ問題じゃん、全然面白くないよ」



むすっと頬を膨らませ、また雑誌を手に取る名無しさん。
その手首を優しくつかんで、骸は微笑んだ。



「まだ問題は終わっていませんよ?」


「でもこれつまんないもん」


「そうですねぇ…。

じゃあ、間違ってしまった君には罰ゲームです」


「え」



ちゅ、と、軽いリップ音。
頬に一瞬だけ触れた柔らかな感触に、
名無しさんは数秒の硬直の後、顔を桜に染める。



「な、な…っ!?///」


「クフフフ…」



キスされた頬を手で押さえ、口をパクパク動かす。
言葉にならない動揺と赤い顔に、骸はさらに上機嫌になった。









 



 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ