ゴッドイーター(短編集)
□【見せない弱さ】
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夕暮れ時の市街地での事。
「今日は宜しくお願いしますね。ゼロさん」
ピンクの髪で、誰よりもおっとりとした女性らしい外見の彼女、「台場カノン」。
後者で銃機の準備をするその横で、俺は愛用のショートブレードを軽く夕日にかざす。
これから荒神のディアウスピターを討伐しに向かうのだが、まず何故二人だけでここのミッションを受注しているのか、その経由はカノンにある。
ー数時間前ー
「あの、ゼロさん」
「…ん?」
久しぶりに神機の手入れをベテラン区画のソファーに座ってやっていたら、カノンが手ぶらで声をかけてきた。
「珍しいな、カノンから話しかけるとか」
「今お時間よろしいですか?」
「まぁ特に急いでもいないし、なんだ」
「私と…、荒神を倒しに行きませんか!」
「…………!?」
バッと驚いた表情でカノンに向ければ、とっさに何を思ったのか察してあわあわと両手を前でひらひらと振る。
「あ、その、嫌ならいいんですよ!
私…、断られるのも慣れているので!」
「あー…いや、断る以前に…、いきなり俺を誘ってどうしたよ…? 第二部隊とか第三部隊の連中が居るだろ」
そう聞いてハァと深い溜め息をついて、うぅ…と苦い表情を見せた。
「私、最近誤射が前よりも酷くなってるような気がして…、防衛班だというのに皆さんからは全く認識されていないですし。
それに、ブラスタだって使いこなせていない気がするんです! 絶対そうです!」
もしかしたら銃の神機が不調なのかなぁとブツブツと真剣な表情で呟く。
「…………」
なんつーか、カノンって自分の事をよく自覚してる割には責任転換みたいな事もするよな……。
根が真面目なのかそうじゃないのか…、前に母親と間違えて俺にメール送ってたし、急ぎ過ぎてパニクる事も時々あるんだよな。
多分、一言で言えば冷静さが足りないと言えばいいんだろうが…、この様子だと助言しても治りそうもないし。
「……いや、確かにブラスタを使う奴はカノンくらいだし、回復弾の量もすげー助かるが、荒神と神機を握れば今助言したとしても……なぁ?」
彼女は荒神との接触時、テンションがハイになって豹変し、人格がどす黒くサディスティックになる。
それを考えれば、俺だけが任務同行したとしてもカバーも出来る気がしない。
「ゼロさん……っ」
「…………!?」
突然ボタボタと涙を流し、俺の手を両手で握り締めた。
何事だよホントに。
「もうゼロさんに頼るしかないんです。ブレンダンさんも最近私の誤射の改善策に参加出来ないくらい忙しいらしくて……っ」
うるうるとマジな顔で見上げ、必死に訴えかけてきた。
っつーか、半ば脅しに来てるよなこれ。