ゴッドイーター(短編集)
□【きっと君の事が好きだから】
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人が少ない夜の時間帯、アナグラ内のエントランスでの事。
荒神が脅威を増してきた中、ゴッドイーターの全員でバランスよく討伐してるので疲れはそこまで強く出てはいないものの、最近、ある人の心配で気になることが出来てしまったアリサ。
ミッション中は荒神に集中するので、些細な悩み事は忘れるものの、静かな夜になれば、結局思考が戻ってしまい思い出してしまう。
悩み事というのは部隊長のゼロの事だ。
最近、ソロでのミッションに出ているらしい彼は、最初の頃は良かったものの、今では一日に一気に3〜4つのミッションをこなしている。
確かに自分と同じ新型の適合者であり、実力も目まぐるしいスピードで格段に上で、こうして毎日アナグラへ帰還しているのだが、
それでも頻度が異常な程多くなってる事が気掛かりで仕方がない。
(…本当に、死に急いでるみたいで……)
そこまで言葉が頭の中に出てきて首を横にふった。
いけない。
こんな事思っていたら、彼までリンドウさんと重なって…。
はぁ…と深い溜め息をついて、エントランスを見渡す。考え事をしていたら結局眠れず、部屋に居ても寝れないから気分転換にとここにやって来た。
でも、エントランスゲート前の手すりに、何故か見知った彼の背中が目に映った。
(……ゼロ…さん?)
両手を手すりの上で組んでて、体重を少しだけ乗せてぼんやりと顔を前に向けてる。
ここから見ても表情が良く分からないが、エレベーターで降りた私に気づいていないのか、ピクリとも動かない。
(どうしよう。呼びかけたらまずい…でしょうか)
彼も私と同じように何か考え事をしてるのかと思えば、そのまま自室に戻った方が良さそうな気がした。
「………………」
声をかけられず、そのまま暫くの静寂が流れる。
やっぱり戻ろうと思い、背を向けてエレベーターのボタンを押そうとした。
「……どうした」
「え…」
不意に後ろからゼロの声が響き、もう一度振り返って見た。
彼がこちらに顔を向けていて、じっと真顔で見ていた。