ゴッドイーター(短編集)

□【リンドウさんと迷子の子】
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午前11時頃、荒神によって荒れ果てた街並みを見渡せば、この地球上に居た人類が滅亡したんじゃないかってくらいな錯覚を覚えるが、

この周辺区域ではコンゴウやディアウスピター等の気性の荒い危険なアラガミが数多く生息している。

俺たちゴッドイーターが狩っても狩っても、無限に増殖しているかのように目撃情報が増え、正直キリがない。



かと言って、そのままこの場所の荒神を喰わずに放置すれば、また新たな荒神をも生み出すだろう。



俺とリーダー(実はリンドウが俺より真面目だと言って勝手につけたあだ名)はそんな危険地帯の街を二人で索敵し、後からリンドウと合流する形となっている。





「俺たちが配属されて結構時間がかかった気がするけど、この区域ってどうも荒神の目撃情報が多いよね」

リーダーが両手で構えてる神機をグッと握りしめ、周囲に目を向けながら俺に告げる。


「ここ最近、アイツら(荒神)も狂暴化してるって噂らしいな…」

「そうは言っても、新型の俺たちがこうしてリンドウさんの任務受けてるけど、二人だけで狂暴化した荒神に出くわしたら人溜まりもない気がするよね」

それを言ったらフラグが立ってるような気がするが…、縁起でもねぇし言葉に出さないでおく。


「っと、リンドウさんみっけ。おーいリンドウさーんっ」

手を振りながら小走りでリンドウに近寄るリーダー。

その後ろ姿を見てのんびりと歩いていたら、よくよく見ると、リンドウの背中に小さい何かが立っているのに気付いた。

なんだ…ありゃ?

「おー、ゼロとリーダー。二人とも索敵ご苦労さん。今こっちに着いたとこなんだ」

落ち着いた口調ではあるがどこかそわそわして落ち着かない様子のリンドウ。

うわ。ぜってーなんかある。
面倒くせぇー事があるな…。

そんな態度でもリーダーは一切気づいてないらしいし。


「そうですか。こっちは特にアラガミも見てないですし、異常はありませんでしたよ」


「おいリーダー」

「んー?」

「上…、じゃねーや。

下だ。リンドウの後ろを見ろ」

何故か反射的にエリック上だ、のジンクス(勝手に)が出てきたが、指摘しねぇーと気付きそうになかったから直球で目だけで場所を指定した。




「んー? あ。あれれ?」

ようやく“誰かが”立っているのに気付き、ひょいっと顔を横にそらして覗かせる。


リンドウの足に隠れるようにして立っているその子は、何度かアナグラ内で見かけた女の子で、名前は確か…、エリナ……つってたか。

顔まで隠すように帽子を深く被ってるが、バレバレだな。


「じ、ジロジロ見ないでよ…」

ボソリと小さい声を発したのがその言葉だった。


「リンドウさん。あなた……」

「ん?」


じっと真顔で変な物を見るかのような顔でリンドウに視線を向ける。


「ロリコンだったんですか…?」

こけっとその場で転びそうになった体勢を直ぐに立て直し、汗をかいて頬を軽く指でかくと、苦笑を浮かべた。

「おいおいっ…、いくらなんでもそりゃあり得ないだろ? 迷子だよ。ま、い、ご!」

「ま、迷子じゃないもん!!」

リンドウの言った単語が気に食わなかった様子で、とっさに横に出てきて声を張り上げた。

「そっかー。迷子なんだね」

「だから迷子じゃないんだってば!!」

もーっ、と両手を上げて必死に反論するあたり、どう見ても迷子だ。

「偶然ここらで一人歩いてるのを見かけてな。危ないから一緒に居るんだが、こりゃ親のとこまで送り届けなきゃいけなさそうなんだよ」

「え、じゃあ今日のアラガミ討伐は延期になるって事ですか?」


「そうなるな」

ありゃりゃとまるで他人事のように声をもらすリーダーだが、直ぐにその子の前で目線を合わせる為にしゃがみ、ニコッと笑いかけた。
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