ゴッドイーター(短編集)
□【誰かを頼る事】
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「ここに来るまで少しずつ外部居住区の事を理解したが、住民によってはフェンリルによる自治は「富の独占」と受け取めてるのも居て、
フェンリルの関係者を特権階級と見なして反感を持ってる住民も多いんだよな」
俺さ…、と声に疲れが混じって尚も話を続ける。
「守る側と守られる側でも、ゴッドイーターそのものを受け入れる住民が全員ってわけじゃないのは仕方ないんだろうなって…、どこか他人事の思考な部分があるよ…」
「…守る側……………」
「けどこれって、少し寂しい世界だよな……」
そう言ったきり、口を閉ざした彼の表情は、本当に寂しそうだった。
じっと雨を見つめていて、なにかを考えているようで、私も彼と同じように空を仰ぎ見る。
冷たくて、暖かい熱も冷ますような雨。
その冷たさが悲しい思い出を作ってるようでも、それとは別に……、
「私には…、この雨が寂しい世界を洗い流してるようにも見えます」
ただなんとなくといったように呟けば、ゼロさんがえ…と私に顔を向けた。
「……洗い流す…か……」
そう独り言のように呟けば、前へ前進し、そのままどしゃ降りの雨の下で立ち止まった。
「ゼ、ゼロさん?」
背を向けたまま「アリサ…」と私の名前を呼ぶ。
「俺もお前も、ゴッドイーターの『適合候補者』として選ばれて、『適合調査試験』にも合格してここに配属出来た事は必然だと信じたいよ。
ソーマやコウタ、サクヤさんにリーダー。
…それから、リンドウさん……」
ふっと目を閉じて顎を引き、やんわりとした口調で話を続けていく。
「ここで会った部隊全員は、神機使いとして居る理由も様々だろうけど、
それでも、会うべき事であると俺は思う。
もちろん、アリサもな」
此方に振り向けば、雨と霧で見えずらかったけれど、とても悲しくて苦しい顔をしているように見えた。
だけどそう見えたのは一瞬だけで、ジッと距離を置いた彼は、私に一言、託した。