ゴッドイーター(短編集)
□【誰かを頼る事】
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幸い、この付近はあまり一般人が立ち入りしないので、徘徊していた荒神も難なく討伐する事が出来た。
ただこの場所の難点と言えば、
「うぅ…、大分濡れちゃいましたね」
いつも降り続ける雨で何度か足を運んではいるものの、雨に濡れた靴や髪が少し気持ち悪くて慣れない。
布を絞るように服の裾を両手で絞って水を切る。
「だな…」
帰還準備が整うまでの数分間、雨の当たらない瓦礫の屋根下に避難し、腕を組んで壁にもたれるゼロさん。
それから曇り空を静かに見上げた。
「アリサは寒くないか?」
「はい。もう慣れもありますから、これくらいどうという事もないですよ。
ゼロさんも平気ですか?」
問題ないと相づちを交わし、ふいに顔をこちらに傾けて口を開いた。
「前にも話したけど、
俺が元々住んでいた場所に荒神の集団が襲いかかったっての、覚えてるか?」
「あ…、はい」
確か彼が何かに悩んでいた深夜のアナグラで、その話を聞いた覚えがある。
「…ここの雨や景色を見ると、丁度その時の光景に疑似していて、思い出しちまうんだよな……」
フッと目線を地面に向け、静かに言い放つ。
けれど、今の彼はなにか複雑な表情を浮かべている。
「……なんか…さ、
あまりにも突然の出来事だったから、記憶も飛び飛びなんだけどよ…」
スッともう一度雨が降る空を見上げては遠くを眺めるような目をする。
「俺がゴッドイーターになる事を決断したキッカケの出来事が、あまり覚えてないんだよな…」
「え……」
意外な事を呟いたと思えば、彼の表情を見ると、どこかボンヤリと寂しそうな顔を浮かべているような気がした。
「…今と年齢はさほど経ってはいないが、何かしら衝動が起こってここへ配属しに来たのは確実なんだ。
けど…、何故だかハッキリと覚えていないんだ…。
荒神が居住区を荒らしてる光景を見ていただけで、俺がこの場を選択したとも思えなくて……」
ふぅ…と息を吐き、
「悪い。アリサだけこの任務に誘ったのは、俺の現状を知っているからなんだ…」