ゴッドイーター(短編集)
□【元気になれるおまじない】
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「今も体調を崩した私の事も、しっかりと気付いてくれてここに居るじゃないですか。
だから私もみんなも、貴方と一緒についていくんです」
「………………」
「だから…――」
とたんにグラリと視界が歪み、また頭がぼんやりとした。
興奮してまだ下がってない熱の影響かもしれない。
倒れそうになる私をゼロさんがもう一度支えてくれて、体を引き寄せてきた。
「………………」
彼の胸を借りながら、ぎゅっと服を握りしめる。
「だから…、謝らないで下さい……」
「……………………」
黙って聞いていた彼は、それでも私を支えたまま、何も言わない。
今どんな表情をしてるのかさえ分からなくて、段々不安になってきた。
「………あぁ…、わかった…」
暫くの沈黙の後、ようやく声を出し、私の目を見つめる。
「俺の事、見ててくれて有り難う…」
そう言ってフッと優しく笑いかけた。
「…………っ」
殆どが無表情で、あんまり見せた事のない顔をされてぐっと俯いてしまった。
「い……、いえ…。此方こそ…、有り難う…ございます……」
私の反応を見てか、クスリと小さく笑いかけ、不意に頭の後ろに手をそえて囁いてきた。
「元気になるように、あるおまじないを試してみるか?」
「え?」
ちょっと顔を上げると、彼がズイッと椅子から立ち上がり、私の頭に何かが触れた感触がした。
「……え、え…?」
それからそのまま立ったまま手を離し、ニヤリとシニカルに笑いかけて言葉を繋げるようにこう言った。
「俺の方にも風邪、移すんじゃねぇぞ」
そう言い残し、ぼんやりと見上げる私の髪をくしゃくしゃと撫でた後、ミッションがあるからと医務室から席を外して行ってしまった。
「………………」
いまいちゼロさんがやったおまじないが何だったのか把握出来てなくて、私はちょっとだけ乱れた髪に触れてみた。
特に何もなくて、手くしで整える。
「………でも何かが触れる感じがしたけれど…。頭に顔を近付けて……。
………………――!」
そこまで言いかけてようやく気付いた。
彼が私を元気にしてくれる為のおまじないを。
「………や、やだ…、私…、また顔が…っ」
火照るように熱くなってしまい、とにかく顔を隠すようにぽすりと横になった。
あの時頭に触れたのって、ゼロさんの唇……だったんじゃ…。
そう思ったら余計に頬が赤くなってきて、思考を止めようと自分自身に言い聞かせた。
「……………………」
ベッドのシーツを握りしめて、ハァ…と息を吐いた。
これじゃあ、逆効果です。
ゼロさん…。
―end―