a little pieces


◆*いや、実際問題さ* [追記]

「会いに来たところで、連れて帰れる人物じゃない。連合内に移住して、リムハッカの伝統文化の復活と継承に献身する前提でなきゃ結婚なんて不可能ですよ」
「まあ、その時はその時だろ」
 肩を竦めてグラスを傾ける僕に、朔さんが苦笑する。と、平門さんもくつくつと喉で笑った。
「そう。その時はその時だ。殿下からのお返事は次に会った時だしな。それまでにギルナーン氏がその点に気づけるかどうかにかかってるというわけだ」
 お坊っちゃまはミュウマリイ王女に猶予を与えたつもりらしいけど、逆なんだよね。
 …けど。
「釘は刺さなかったんですね、平門さん」
「俺が口出しすることじゃないだろう?」
「拗れて殿下を拉致る可能性が捨てきれないから、予防線を張るのもアリかと思いますけど」
 回避できる厄介なら前もって避けた方がいいんじゃない?
 僕が首を傾げると、平門さんは口許にうっすらと悪い笑みを浮かべた。
「こちらに落ち度があったとは言え、敵意を剥き出しにされたしな。そこまで親切にしてやる必要はないさ」
「あー、なるほど」
 頭を下げに行ったのは平門さんと與儀くんの二人だ。
「ははは。何だかんだ言って、お前も與儀に甘いよなぁ」
「あれでも一応、可愛い貮号艇の子供なんでな」
「无くんと同列かよ…」
 おかんむりのお坊っちゃまを前にビビりまくる與儀くんを思い浮かべて、否定できずに溜め息を吐く。
「何だ、喰。お前も可愛い壱号艇の子供だぞ?」
「いや、可愛くなくていいから」
 溜め息をどうとったのか。僕は頭に伸びてきた艇長の手を払いのけた。気色悪いこと言うなよ、オッサン。
 とは言え、僕の帰る場所は壱号艇だ。
 −−−お坊っちゃまは、故郷を捨てて、まったく違う国の人間になる覚悟ができるんだろうか。


−−−「カーニヴァル」19巻より妄想



来月、20巻出るので19巻ネタを。
ところで、どなたか朔のお茶目かっこいい夢小説書いて頂けませんか……。

2017/09/21(Thu) 17:09

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