リアルマーメイド
□リアルマーメイド
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「なあなあ陸、えるちゃんってどんな水着だと思う?」
ブッ
「は?お、おま、なんの話して…!!」
ゴホゴホと咳き込んだ後に発した言葉は自分で思っていたよりも大きな声で、近くにいた何人かがびっくりとしてこちらを見ていた。やべ、有川も見てんじゃん。
「やっだー陸くんてば、しらばっくれちゃってー。さっきから女子の水着の話題気にしてんじゃん、しかもえるちゃんのとこだけピンポ…フゴッ」
いやお前声でけーよどうすんだよ有川に聞こえんだろもし今の聞かれてたら俺、恥ずかしくて死ねる。死ねるよ、頼むから黙れ黙ってくださいお願いします。
ギブキブと言って俺の手をのがれたアホな友人__幕内昴は、悪びれなくケロッとした顔でこう言葉を紡いだ。
「なあ、海行かねー?えるちゃんたちも誘ってさ!」
な、な、
「い、いや有川たちもなにかあるかもだぜ?都合つかないとか!都合つかないとか!!」
「いや、なんで2回も繰り返すんだよ。ってかもうアリスと話つけちゃったんだったわ、来週な!週末空いてるっしょ?」
いやー言い忘れてたわごめんごめんと言う昴は笑っている。お前謝る気ねーだろ、っつーかわざとかわざとだろ!?どうすんだどうすんだどうすんだ俺。好きな子の水着とかやばいって、やばいって!!
そう、思考をめぐらせながら有川を盗み見る。こっちにはまったく気づかないで楽しくおしゃべりしている彼女とは、まだ微妙、といえる関係のままだった。___チャンスだ。このままじゃどうにももどかしくて、いつも同じことに悩むことになる。そうだ、いい機会じゃないか。だってまだ、彼女に拒否されたとか、そんなんじゃないから。
変えたい、関係を。
縮めたい、距離を。